第二百十話
ヴァルハントは部下からの報告を受けてにやりとする。
開幕の展開は基本と変わらない。
電子戦からはじまりミサイルでの撃ち合い。
偵察艦隊は強力な電子攻撃に襲われたといっていたが蓋を開けてみれば普通の電子戦だ。
この程度の電子戦に敗れたのかと思うとやはり偵察艦隊が無能だったのだろう。
ミサイルの撃ち合いをしながら距離を詰める。
ここからは主砲を交えた削りあいだ。
この状況なら数で優るこちら側が有利だ。
そう思っていたら相手の左翼艦隊に動きがあった。
自ら距離を詰め突っ込んでくる。
数で負けているのにその心意気は買うが自殺願望者と変わらない。
ヴァルハントは殲滅せよと声高らかに命令する。
これなら余裕で勝てるだろう。
そう思い手に持っているワインを匂いを楽しみ一気に飲み干した。
俊はメティスに命令して電子攻撃を開始させた。
仕込んでおいたウィルスはまだ使わない。
被害は増えるがこれも勝つためだ。
突っ込んでいったエルフの艦隊の動きが気になり確認する。
宣言通り、全ての攻撃を回避し相手艦隊に肉薄する。
そして、主砲で次々にヴァルハントの艦隊に被害を与えていた。
精霊の加護を受けた船の力は圧倒的だった。
中央、右翼にも動きがある。
中央艦隊はお互いに距離を保ちつつの主砲の撃ち合いをしていた。
その中でもやはり戦果をあげているのは信濃だった。
出力を絞っているといってもその威力は健在だ。
そして出力を絞ることにはもう1つメリットがあった。
それは主砲のチャージ速度の短縮だ。
これにより、かなり早いペースで主砲を発射することが可能になっていた。
右翼艦隊でも主砲の撃ち合いに発展していたがこっそりエルフィンドの率いる突撃艦隊が離脱していた。
その突撃艦を護衛するように楓の指揮する空母艦隊からも戦闘機が発艦している。
相手はメティスの電子攻撃でレーダーでの目が潰されておりそれに気がついている者はいないだろう。
今のところは想定通りに事態が進んでいる。
被害が出ている艦もあるが許容範囲ないだ。
俊は自走できる被害の大きい船については後方に下げさせる。
後方に下げられた船は工作艦である明石で修理を即座に開始する。
事前に修理用のパーツは用意してある為、短時間での修理が可能だった。
キャパがオーバーするようなら前線基地への帰投も視野に入れていたが今のところはその必要はなさそうだ。
全ては順調に進んでいる。
だが、だからこそ不安になってくる。
俊は見落としがないかもう1度、戦場全体を確認する。
自分がミスをすれば誰かが命を落とすかもしれない。
そう思うと体が恐怖で震えてくる。
明石はその様子に気がついたのか寄ってくると抱きついてくる。
明石の温かい体温を感じると恐怖が薄れてくる。
自分は1人じゃない。
そう勇気づけられた気分だった。




