第二百九話
ヴァルハントは拠点に最低限の防衛戦力を残し全艦隊に出撃を命じた。
部下は即座に命令を実行する。
練度の高さは本物だった。
「これだけの戦力があれば余裕だろう」
ヴァルハントはそう言ってワインを飲む。
その姿を見て司令部に所属する者達は苦虫を潰したような顔をしていた。
誰も何も言わないが本音が透けて見えるようだった。
最高責任者が戦闘を前に飲酒など本来ならありえない。
だが、皇族という立場のヴァルハントに意見を言える者などいなかった。
その頃、俊の方でも戦闘準備が終わっていた。
戦力差で負けている以上、工夫するしかない。
中央に信濃を旗艦とするマーチェの率いるAI艦隊。
右翼に他の女性陣とAI艦隊を配置する。
左翼はエルフの艦隊を配置する。
左翼のエルフ艦隊は数は少ないがそれでも精霊の力を考えれば俊の持ち札としては最強の艦隊だった。
補給を終えた傭兵達の艦隊は後方に待機させ予備戦力として残す形だ。
俊自身も万能工作艦である明石に乗って後方で待機する。
電子戦艦であるメティスも今回は前線まで出張っている。
全戦力を投入しヴァルハント率いる敵艦隊を待ち構えていた。
やはりというか一番最初に敵艦隊の接近に気づいたのはメティスだった。
「想定通りのルートを敵艦隊が進行中」
「了解。手筈通りに」
ヴァルハント側の偵察艦隊が宇宙生物を排除したといはいえ、ヴァルハントの率いる艦隊が全て通れるほどではない。
まずは、安全を確保することからはじめなければならない。
減らせる弾薬やミサイルは微々たるものかもしれないが、それでも相手が消耗してくれるのは歓迎すべきことだった。
待機していると宇宙生物の壁を排除してヴァルハント率いる敵艦隊が姿を現す。
「各艦隊。攻撃開始」
俊側の初手はメティスを除く全艦隊で電子戦を仕掛けることだった。
相手も全力で対抗してくる。
これは想定通りの展開だ。
両者、電子戦をしながらミサイルを発射する。
どちらの艦隊も近接防御用の機銃でミサイルを撃ち落とす。
不幸な何隻かはミサイルの餌食になるが全体としては微々たるものだ。
ヴァルハントの艦隊は怯まず距離を詰めてくる。
数で優っているのだ、攻撃手段を増やしすり潰すのが目的だろう。
俊の率いる艦隊で真っ先に動いたのは左翼のエルフ艦隊だった。
回避しながら距離を詰め自ら敵艦隊に突っ込んでいく。
他の艦隊は作戦通り中距離戦を開始していた。
お互いに距離が詰まったことで被害にあう艦が増えていく。
俊の艦隊で被害にあっているのはAI搭載の艦だけだがここからが本当の正念場だった。




