第二百七話
先陣を任されたドリトルと傭兵達は接触するであろうポイントに出力を絞って待ち伏せをする。
「戦場に戻ることになるなんてね」
ドリトルはそう軽口を叩く。
「マスターは嫌だった?」
ヴィービルがそう問いかける。
「あの子のことは嫌いじゃないからねん。貴方が戻ってきたのも運命だったのよん」
ドリトルは俊の為ならヴィービルがいなくても軍艦を自前で用意して参戦しただろう。
だが、万全ではないとはいえ、こうして万能戦艦ヴィービルに乗り戦場に立っている。
「期待してるわよん」
「圧倒的勝利を約束する」
無駄口を叩くのはここまでだ。
両者は感覚を研ぎ澄ましていく。
宇宙生物の壁が破られヴァルハント配下の艦隊の姿を現す。
だが、仕掛けるのはまだ早い。
もっと誘い込んでからだ。
それは他の傭兵達もわかっているのだろう。
動く傭兵はまだ1人もいない。
ヴァルハントの配下の艦隊が半分ほど待ち伏せポイントに侵入したタイミングで傭兵達は次々に主機関を出力を上げる。
「ヴィービル。私達もやるわよ」
「いつでもいける」
ヴィービルはそう宣言してみせる。
その言葉通り、動き出したのは遅かったが万能戦艦ヴィービルは瞬時に臨戦態勢を整える。
ヴィービルが戦闘態勢を整えたのと同時だった。
メティスによる電子攻撃がはじまった。
妨害電波を力任せに叩きつけるだけだが、それだけでも相手が混乱するのが手に取るようにわかる。
相手は目であるレーダーが潰れていることだろう。
そこにドリトルは主砲を容赦なく発射する。
万能戦艦ヴィービルの主砲は特別製だ。
出力を絞っているというのに10隻以上を1発で仕留める。
他の傭兵達も負けじと攻撃を開始する。
ヴァルハント配下の艦隊はまだ混乱したままだ。
闇雲に反撃を試みる艦がいないわけではなかったが、そんな攻撃が当たるはずもない。
傭兵達は一方的にヴァルハントの艦隊を叩きのめす。
数隻が逃げていったがドリトルはあえて放置する。
情報を持ち帰る者が必要だったからだ。
これでヴァルハント側も状況は理解するはずだ。
次は大規模な艦隊同士でのぶつかり合いになるだろう。
初戦は制したが得られている情報ではほんの一部でしかない。
数はこちらが負けている為、ここからいかに消耗せずに効率よく立ち回れるか。
それが勝負を決めるだろう。
傭兵達も今のところは裏切る様子はない。
だが、状況が不利になれば裏切る者もでるはずだ。
補給の為に離脱する傭兵艦隊の最後尾につけながらドリトルは覚悟を決めていた。
傭兵達を連れてきたのはドリトルだ。
裏切るようなら自分が始末する。
味方撃ちと非難を受けようとそれだけの覚悟があった。




