第二百五話
俊はメティスにとある提案をされそれを採用した。
実行役としてエルフの艦隊にその策を託す。
「必ず成功させます」
マーカスはそう言って指揮下のエルフ達を連れて出発した。
俊もデータリンクからその雄姿を見守る。
エルフの艦隊は進行するのに邪魔な宇宙生物だけを狩り突き進んでいく。
目標地点の近くに到達するとエルフの艦隊とのデータリンクが途切れる。
話には聞いていたので俊は焦らない。
精霊の力で外部への情報を遮断したのだ。
5時間ほど経った頃、エルフの艦隊とのデータリンクが復活する。
どうやら無事に目的を達成したようだ。
「メティス。状況は?」
「マスター。確認中です」
5分ほど時間が経ち、メティスが報告してくる。
「敵艦と思われる端末にアクセス成功しました」
「ばれないように慎重にね」
メティスが提案したのは敵艦隊にアクセスする為にアンテナを設置することだった。
このアンテナはメティスの通常装備に含まれており電子戦を有利に進めるための中継器だ。
フル活用すれば相手の艦を乗っ取ることも可能だが、今回はそれはしない。
こっそりシステムに忍び込み情報を収集するのが目的だ。
メティスの目的はそれだけではない。
増殖型のウィルスを仕込み、拠点に戻った際に他の艦にも感染させることだった。
感染したウィルスはメティスの起動コードで活性化するようになっている。
ウィルスが活性化した艦は制御が制限される。
浸食具合にもよるが操ることすら可能だった。
「それで、相手は何者かわかった?」
「予想通りヴァルハントの配下のようです」
「そっか・・・。宇宙生物の壁も薄くなってきてるしぶつかるのも時間の問題かな」
俊は本格的な戦闘を前に全員に帰還指示を出すことにした。
「皆、お疲れ様。そろそろ時間稼ぎも限界だから1度戻ってゆっくり休んで」
各艦隊から返事が返ってくる。
「了解」
相手はまだこちらに気がついていない。
休むタイミングは今しかなかった。
少しでも有利に戦うために疲労を抜くことは大切なことだ。
本格的に戦闘になればどれぐらいの時間、戦闘が継続するかわからない。
疲労で判断が鈍ればそれだけ危険性が上がる。
ローテーションを組んで対応する予定ではいるが戦力に任せて総攻撃をされればこちらも全力で対応する必要がある。
メティスの仕掛けもうまくいったので戦力差は少しは埋まったはずだが油断はできない。
打てる手はほぼ全て打ったといっていい。
冷静に振舞っていはいるが今すぐ逃げられるなら逃げたい気分だった。
だが、守るべきものを持つ俊にその選択肢はとれない。
信心深いわけではないがいるかいないかわからない神に祈る。
どうか皆が無事でありますように。
俊はすぐそばで浮いている精霊の卵が反応していることに気がついていなかった。




