第二百二話
ヴァルハントの拠点はまだ見つかっていない。
俊はここで1つの決断を下した。
「資源も余っているし効率化を狙って前線基地を作ろうと思います」
宇宙生物を排除した場所は空白地帯となっている。
その空白地帯に前線基地を作る計画だ。
惑星雪風に戻ってくるのでは効率が悪すぎる。
それに、前線基地で補給・整備が可能になれば領民が戦闘に巻き込まれる可能性も低くなる。
「完成前に衝突するのでは意味がないぞ?」
シュラバはそう言ってくる。
「確かにその可能性はあります。ですが、負ける前提で戦うつもりはありませんので」
俊はそう言い切った。
「覚悟があるなら儂は止めんよ。それに、後の統治を考えれば有効じゃ」
今回の戦争に勝てば当然、宙域を統治していく必要がある。
事前に前線基地があるのとないのとでは統治のし易さが大きく変わってくる。
「幸い、うちには工作機が大量にありますので」
現在は駆逐艦や民間の採掘艦に戦闘艦などを生産させているがそれらを一時的に止めて投入すれば簡易的な拠点ならすぐに出来上がるだろう。
人が生活できるようになれば運用しながら開発を続ければいい。
俊は傭兵の一部を呼び出すと拠点設営の護衛を依頼する。
宇宙生物を狩れば狩るほど儲かる状況なので依頼を引き受けてもらうのにそれなりの額を支払う必要があったが宇宙生物の資源を売った金でかなり懐には余裕がある。
これぐらいの出費なら痛くもかゆくもなかった。
今回の作戦では大型のドックで建造中だった電子戦艦のメティスを投入する。
完全に建造が終わったわけではないがそれでも電子戦艦としての機能は完成している。
AIを指揮するぐらいなら問題ない。
それに残りの未完成部分は大型ドックでなくても作業が可能だった。
今回の計画では万能工作艦明石を引き連れて俊自身が行う予定だ。
明石の機能を使えば未完成部分もそう時間もかからず整えることが可能だろう。
「お爺様にお願いがあります」
「なんじゃ?」
「不在の間こちらの宙域をお願いできませんか?」
官僚が全くいなくなるわけではない。
だが、責任者が全員出払う形となる。
それは少し統治に不安が残る。
「ふむ・・・。仕方のない孫じゃな。儂をこきつかうか・・・」
シュラバはそう言って少し考えこむ。
「儂の好きにして良いなら引き受けよう」
そう言ってにやりと笑う。
まるで悪戯小僧のような気配を感じる。
絶対に何かやりそうだなと思いつつ俊は決断する。
「お爺様にお任せします」
仮にも銀河帝国の皇帝なのだ。
あまりおかしなことはしないだろう。
惑星雪風周辺の統治をシュラバに任せ俊は前線基地を作る為に出発した。




