第百九十六話
俊の元にキリス星系の領主であるウェルストンから通信が送られてきた。
「お久しぶりです。気になることがありましたので連絡させていただきました」
「何かあったのですか?」
「私が管轄している宙域の外縁部に正体不明の大艦隊がワープアウトしてきました」
「それは確かに気になりますね」
「銀河帝国でワープ機関を使える者は限られます」
基本的にワープ機関を使えるのは正規艦隊か皇族の抱えている船だけだ。
正規艦隊であれば混乱を避けるために事前に通達してくるのが通例だ。
皇族の乗る船でも基本は変わらない。
緊急時でもない限り通達なしでワープアウトしてくることは稀と言ってよかった。
それがなかったとなるとワープアウトしてきた艦隊は何が目的だったのか。
「それと気になることがもう1つあります」
「何でしょう?」
「艦隊が向かった先が逃げた犯罪者と同じルートでした」
「討伐が目的ではないですよね?」
「討伐が目的であればいいのですが、目的は不明です」
「情報ありがとうございます」
「いえいえ。あまり役に立てず申し訳ない」
「いえ、貴重な情報ありがとうございます」
「何かあれば気軽にお申しつけください。隣人として力をお貸ししますので」
ウェルストンを完全に信用はできないがそれでも辺境で隣合う同士だ。
この言葉は力強かった。
「その時はお願いします」
少し後ろで通信を聞いていたシュラバが話しかけてくる。
「今、皇族で動きがわからぬのはヴァルハントだけだの」
「どういった方なのですか?」
「儂の長子じゃよ。優秀ではあるのじゃが野心が高くての」
そう言ってシュラバは苦笑いする。
野心が高いということは現在の安定より宙域拡大を優先しそうだ。
銀河帝国は巨大で強い国家だがそれでも万全ではない。
支配する宙域の隣には他の国家が治める宙域も存在する。
銀河帝国が負けるとは思わないが戦争になれば多くの人が犠牲になるだろう。
銀河帝国は支配する宙域を開発する形で拡大はしているが1から開発するよりは開発済みの宙域を獲得した方が手っ取り早いのは間違いない。
「野心さえなければヴァルハントでもよかったのだがな」
そう語るシュラバは複雑そうな顔をしていた。
絶大な権力を握る皇帝であるシュラバだが、だからこそ実の家族は大事なのだろう。
まだ共に過ごして数日だが自分への接し方を見るに本来のシュラバは情に厚い性格なのがよくわかる。
「俊よ。状況によってはお主に勅命を与える。準備をしておくように」
そこには祖父ではなく皇帝としての顔があった。
「わかりました」
女性陣は現在も逃げた犯罪者達の捜査を継続している。
俊は何かあった際にすぐ動けるように配下に通達を出す。
後できることは少しでも戦力を増やすぐらいだが何もしないよりはいいだろう。




