第百九十三話
シュラバが俊の教育を始めた頃、帝都でも動きがあった。
「はぁ・・・。予想していたことだけど馬鹿達が動き出したわね」
アルシェントは深いため息をつく。
帝都を任された以上、この馬鹿達の相手をしないわけにもいかなかった。
それにこれはシュラバがアルシェントの能力を図る意味もあるはずだ。
失敗すれば評価を下げることになるだろう。
「アルシェント様。プランAを実行しますがよろしいですか?」
副官がそう確認をしてくる。
アルシェントはあらかじめいくつかのパターンを想定をしてプランを組んでいた。
プランAというのは最も確率の高い想定だった。
「プランAを実行しなさい。ただし、想定外の事態が起きたらすぐに報告するように」
「かしこまりました」
現在、馬鹿なことをしようとしているのはアルシェントの腹違いの兄であるイクマだった。
アルシェントには腹違いの兄弟姉妹が多くいる。
銀河帝国の帝位争いでは一番優秀な者が帝位を継ぐことになっていた。
一度は投げ出したアルシェントではあるがこうして戻ってきた以上は最善を尽くす。
それに息子である俊のことを考えれば自分が皇帝になるしかない。
帝位争いに敗れればアルシェントの息子であるということだけで排除されかねない。
「アルシェント様。他にも動きがあるようです」
「今度は誰?」
「末の妹君であるスーリャン様です」
「あぁ・・・。あの娘もなの・・・」
昔は泣き虫でアルシェントに甘える可愛い娘だった。
だが、会わないうちに性格が変わっていてもおかしくない。
「アルシェント様。まずいです」
「どうしたの?」
「スーリャン様がイクマ様の妨害に入るようです」
「あぁ・・・。もう。足止めしなさい。私が止めに入るわ」
ここでスーリャンに手を出されては計画が台無しだ。
自分の為に動いてくれたのは嬉しいが計画を壊されてはたまらない。
アルシェントの部下は素早く動きスーリャンの動きを止める。
「もう。どうして邪魔するの?」
アルシェントは全力で向かいスーリャンを落ち着かせる。
「スーリャン。落ち着きなさい」
「お姉様?」
「イクマの動きは把握してるわ。計画通りだから大人しくしてて」
「流石はお姉様です」
そう言って全力で抱きつき頭をぐりぐりしてくる。
「貴方は変わらないわね」
そう言ってアルシェントはスーリャンの頭を撫でる。
「私はお姉様に皇帝になってほしいの」
そう言って見上げてくる目には昔にはなかった強い意志があった。
「私もそのつもりよ」
「私に出来ることなら何でも言ってね」
スーリャンはアルシェントが銀河帝国を離れているうちに勢力を拡大していた。
その力は皇帝の第一候補であるアルシェントですら無視できないほどの規模になっていた。




