第百八十七話
俊と別れたレティシアはすぐに行動に移っていた。
本来なら銀河帝国に重大な危機が迫っている時にしか使用の許されない秘匿回線を開く。
皇帝陛下に直接、連絡を取ることはできないがあげられた情報は情報局の局長が精査し必要なら皇帝陛下にすぐに奏上される。
帝都を離れる際に局長から孫である俊のことを皇帝陛下が気にされているとは話を聞いていたので怒られることはないだろう。
それに、銀河帝国の未来にとって無視の出来ない情報も含まれている。
未開発宙域に潜む犯罪者達。
これは規模によっては正規艦隊をいくつも動かなければならない事態も想定される。
そして、俊の配下にいる知能を持ったAI達。
集めた情報では今のところは危険はない。
だからといって無視できるような話でもないのだ。
銀河帝国の他の宙域でもAIは利用されている。
だが、銀河帝国内で使われているAIは古代文明の滅びた理由から幾重にもセーフティーが設けられている。
俊の艦隊などで運用されているAIにも設けられているはずだがそれでも数が多すぎる。
俊の支配する宙域は資源が豊富でありいくらでも数を増やすことも可能だ。
暴走し数が増え銀河帝国に牙を剥くような事態になれば古代文明の再来だ。
今のところ安全に管理されているが俊の母であるアルシェントと敵対する派閥からすれば攻撃する口実にしてくる可能性が高かった。
皇帝陛下は強大な権限を持ってはいる。
だが、銀河帝国は巨大になりすぎた。
全てを自分1人で支配するのは不可能だ。
そうなってくると他の皇族の協力が必要不可欠だ。
残っている皇族はアルシェントほどでないにしても優秀な者ばかり。
攻撃する口実を与えれば必ずやっかいなことになる。
レティシアは俊のことを気に入っている。
皇族として育てられてこなかったからか親しみやすくどこか抜けている。
そんなところがお気に入りなのだ。
宇宙に出て必死に環境に慣れようとしてきたことも知っている。
ダンブルグ伯爵家のマーチェが補佐をしているとはいえ、それでも宙域の采配の多くは俊にしかできない。
慣れないなりに領民の為に動いているのも知っている。
犯罪者であった元宇宙海賊達の処遇を見ても圧政を布くタイプではない。
彼等が犯罪者になった理由を知っているレティシアとしてはいつもどうにかしてあげたいと思っていた。
だが、情報局の駒である自分には実現不可能なことだった。
レティシアは開発具合を確認しながら今後も銀河帝国内の犯罪者達を引き渡す予定でいた。
俊なら安心して任せられる。
自分の重みを1つ解決してくれた俊の為に出来るだけ力になりたかった。




