第百八十一話
支配する宙域に戻ってきた俊がまずしたのは空いている巨大なドックで何を建造するかだった。
だが、巨大なドックでは既にもう次の船の建造がはじまっていた。
「ちなみに誰の指示か聞いても?」
俊はドックの責任者に尋ねる。
「明石様の指示ですね」
「明石の?」
「はい。領主様の許可を得ているとばかり思っていましたが・・・」
責任者は俊が知らなかったことを理解したのだろう。
責任者を責めるのは筋違いだ。
明石も考え無しで指示を出しているわけではないだろう。
怒るのは何を造っているか把握してからでも遅くない。
「造っている船は何なのか説明してもらっても?」
「電子戦艦ですね」
「電子戦艦?」
電子戦艦とは文字通り電子戦を専門にする戦艦だ。
だが、何故このような戦艦を造っているのか俊にはわからなかった。
「ちょっと明石に確認してきますね」
そう言って俊は明石の元に急いだ。
「明石。聞きたいことがあるんだけど・・・」
「マスター。何ですか?」
「電子戦艦を造っているって聞いたんだけど」
「必要だと思ったから指示を出しておいたのです」
そう言って明石は胸を張る。
「意図を説明してもらっても?」
「マスターの戦力はAIが多いのです。人が指示を出すよりも電子戦艦が指示を出した方が効率的なのです」
「つまり、戦力を安定して運用する為に造ったと?」
「その通りなのです。後、紹介するのです」
明石がそう言うと1人の少女が現れる。
「彼女は?」
「電子戦艦の頭脳であるメティスちゃんなのです」
俊はその事実に頭を抱えたい気分になった。
頭脳ということは彼女はただの少女ではない。
AIということなのだろう。
「明石・・・。アバター持ちのAIを増やすときは声をかけてほしいかな」
「駄目だったのです?明石は仲間が増えて嬉しいのです」
そう言って可愛らしく言ってくる。
「駄目とはいわないけどトラブルになる可能性もあるからね」
アバター持ちのAIは自分で考えて自律的に動くことが出来る。
俊達が運用している多くのAIとは全くの別物だ。
「わかったのです。次からは気をつけるのです」
反省はしているようだが懲りた様子がない。
この様子だと隙を見せればまた同じことを繰り返しそうではある。
だが、これだけ嬉しそうな明石を見ると本気で怒ることができなかった。
ヴィービルは常に一緒にいるわけではないし同じアバター持ちのAIである信濃は俊達と同行していた。
仲間が全員忙しく動き回っている中で1人になり寂しかった気持ちもあるのだろう。
成長してきたとはいえ精神面ではまだまだ幼さが残っている。
正しく成長させるのは俊達の役目ではあるが、子育てのしたことのない俊はちゃんと面倒を見れるのか不安な気持ちもあった。




