第百七十五話
状況も落ち着き俊は改めてウェルストンとステーションで会っていた。
「今回は助かりました。改めてお礼申し上げます」
「いえ。それにしても犯罪者の数が多すぎませんか?」
「それには理由があるんです」
そう言ってウェルストンは説明をはじめる。
「キリス星系は銀河帝国の中では辺境にあります。貴方の父君であるカール卿がハーリー星系を開拓したとはいえ、実質的に放置に近い状況でした」
確かに父であるカールは明石を造船する為に、休日のたびにハーリー星系にはきていたのだろう。
だが、統治は部下に任せほぼ口を出していない可能性が高い。
「辺境というのは中央の目が届きにくいということでもあります」
銀河帝国は広大な宙域を支配する巨大な国だ。
だが、戦力は無限にあるわけではない。
中央や重要拠点に軍を集中するのは自然なことだろう。
犯罪者としては摘発のリスクが低く旨味のある場所に拠点を構える。
言われてみれば納得のできることだった。
「しかし、今になって急に動きを見せた理由は?」
「それは俊卿。貴方が来たからです」
「僕が?」
「今、最も勢いのある皇族は母君であられるアルシェント様です」
ニュースを聞けば母であるアルシェントの話を聞かない日はないぐらいだった。
「ご子息である俊卿は皇族の中でも重要な立ち位置にいます。中央は当然、注目するわけです」
中央からの動きは確かにあった。
親衛隊の派遣に情報局の接触。
他にもまだ俊が知らない動きが銀河帝国の中ではあるのだろう。
「それが今回の犯罪者達の動きに繋がったと?」
「はい。彼等からすれば危険な宙域にとどまりたくはないでしょう。少し押してやれば動くと思っていました」
それが今回の大規模な演習というわけだ。
「なるほど・・・。まんまと利用されたわけですね」
「悪く思わないでください。敵を騙すにはまず味方からといいますし」
「それはいいんですけどね・・・。ウェルストン卿。どれだけ戦力を隠し持っているんですか?」
「それは秘密です」
そう言って誤魔化された。
現在の俊の戦力では本気でやりあったら数の差で負けるだろう。
幸い、ハーリー星系と開発中の宙域でも造船を続けている。
それになりより万能工作艦の明石があるのだ。
そのまま戦力を増強していけば数の差は埋まるだろう。
そうなってくると人材の確保が問題だ。
AIも戦力として数えられるが自動対応では限界がある。
指示を出す人材はどうしても必要だった。
元宇宙海賊の子供達を育成しているがそれだけでは支配する宙域を守るのには足りていない。
母であるアルシェントや父であるカールに頼めば融通してくれそうだがそれは最後の手段に取っておきたかった。




