2. 悲劇の始まり
(私が出かける前と同じ格好でスマホを弄っている……)
灯が帰ってくるとシェアハウスの共用部屋にあるソファで、愛川凛翔が寛いでいた。
灯が家を出たのは昼前で今は夕方。
時間の経過を微塵も感じさせないように同じ格好でスマホに注視している。
ぼーーっとしているのは、彼の常ではあるのだが……視線を向けた先にあるキッチンにもゴミ箱にも飲み食いをした痕跡はなかった。
(さすがに喉渇くんじゃ…?でも、何か飲む物あったかしら)
ふむ……と考えを凝らし、閃いた。
飲み物なら、丁度買ってきたところだ。
良いものがあるではないか!
「りーさん、これ飲む?オススメだよ、美味しいの」
「え、あ、うん?うん。はい」
灯が手渡した飲み物を凛翔はテキトーに頷きながら受け取る。
返事しているから、意識レベルも正常のようだ。良かった良かった。
だが、これが凛翔にとっての悲劇の始まりである。
パッと見は夏の風物詩、ラムネの様な入れ物に入った素敵な飲み物である。
凛翔は渡された飲み物を何の疑いもせずに、ぼけっとしながらもノールックでささっと開けるとグイと口に傾けた。
「……っ!?オエ、ゲホゲホッ……何これ、え、何でこれ飲ましたの?」
喉元を過ぎるかどうかのところで、凛翔は盛大にむせ込んだ。呼吸を整え、今自らが飲んだもののラベルを見る。
「最近ハマってるので、お裾分け。幸せな気分になるんだよ」
「……は?!(嘘だろこの人、何言ってんだ?頭おかしいのか?掴み所が無いとは思ってはいたが…か、怪物にもほどがある……!!)」
凛翔は信じられないようなものを見る目で灯のことをやっと見る。
しかし、自分に突然のサプライズをかました当の本人はニコニコと悪意のない笑みを浮かべていたため、湧いてくる感情は言葉にならなかった……。
以降、灯から貰う飲食物に警戒する凛翔さん。可哀想。




