オークション
オークション会場に行くと、思ったより人が少なかった。
理由は、オークションには街長などの会議に参加した人や、その付き添い以外は、参加するだけで100万フレを払わないと参加できないからだ。
なにかを落札すると、参加料を差し引いた額になるので、ただの見学客や、野次馬を出さないようにするための措置みたいだ。
カンナとエリーの参加料は払った。マリンが…。
もう最低限な【赦免書】はもらったので、俺が出したかったが一足先に払っていた。
そんな所だったので、周りから俺をバカにする視線や、同情する視線が痛かった。
やはり【翻訳ピアス】は、ある意味伝説らしい。
この状況でどこが成り上がったんだろう。
リオンさんに挨拶して周りを、ギャフンと言わせてやりたかったが、ここには来てないようだった。
よく考えるとそんな事しなくても、もう会わないんだから別にいいか。
ただ、会いたくない奴はいた。
シンツーがいたので、面倒臭い事にならないように、シンツーから離れた。
今までの事を考えると、どうせ会うんだろうが、会わない努力はしないとな。
シンツーが奴隷の方に行ったので、まず装備品を鑑定していた。
オークションのやり方は、奴隷は競るが、装備品と宝飾品は、最低落札価格が表示されるので、最低落札価格以上の金額を書いた紙を、商品の前の箱にいれる。
奴隷の人を見せ物にするみたいだから、逆が良いんじゃないかと思った。いや、みたいじゃなくて、見せ物にしているのか…。
いまだにこういうところは慣れないな。でも慣れたくはないな。
装備品を鑑定していると、伝説級の装備品ばかりで、なかには神級もあったが、最低落札価格でも高かった。
俺の予想では俺とマリンの所持金を全部使って、なんとか勝負になるくらいだった。
神級の装備品なんて、最低落札価格にも届かない。
凄い装備品ばかりだったが、俺達の目的は、家事をしてくれる奴隷だし、俺達に使いこなせるか分からない装備品だったので、買おうとは思わなかった。
まだ、シンツーが奴隷のところにいるので、興味のない美術品を見ていた。
そのなかに、とんでもないものがあった。
【花の宝石】:花と宝石が融合した物
えっ…。なにこれ…。【神鑑定】出来ないものってなに?これは間違いなく厄介事だ。というか、MP無くなって、動けないんだけど…。と困っていると、
「ご主人様、綺麗な宝石ですね。ご主人様の色ばかりで良いですね。」
確かに、花に緑と金色、銀色の宝石がついている。
言われてみればそうだな。俺の目は緑━━。と考えてると、マリンが紙をいれた。止める暇がなかった。
「これを、ごしゅ…コホン。大きい金額は書いてないので、買えるかわかりませんけど…。」
そう言い残して、顔が赤くなって、嬉しそうに女将さんのところに行った。
俺は見えていた。マリンが書いた金額は、マリンが持っている全財産に近かった。
というかマズイ。
あの金額なら、ほぼ確実に落札する。大金払って、厄介事を背負い込むとは…。払ったのはマリンなんだが…。
マリン主人公してるな。と現実逃避して、MPを回復を待っていた。
だけど、そんな事考えてる暇はなかった。
女性陣がシンツーに絡まれていた。
もう、なんでこんな風に、厄介事が解決する前に、新たな厄介事が起きるんだ。
エリーのMPを借りて動けるようにして、新たな厄介事に向かった。
俺とエリーのMPは共有できるみたいで、俺の自由にできる。
エリーにおかげで、動けるようになったのでそこへ向かった。
俺の顔を見ると、シンツーは退散していった。
本当に、リオン様、様だ。
シンツーがどこかに行ったので、奴隷を見に行った。
奴隷のブース?なんて言うんだ。奴隷がいる場所は各奴隷商店が、自慢の奴隷を連れてきて、店ごとに区切ってあった。
1つ目の商店のところに行った。
ここは有名店で、レベル5の奴隷も複数いるらしい。
確かにレベル4や5がいた。しかし、同じレベル5でも、マリンとカンナとは全然違った。養殖なのかな。と思った。
奴隷商人は、一人一人、奴隷を紹介していた。
そのなかには、見覚えのある人もいた。
マリン達と違って、あまり良い思い出がない人達ばかりだったが…。
それに加え、思い出の時の様に、俺をバカにした視線で見ていた。
トラウマや、今の立場、状況でなんともいえない感情になった。
俺の気持ちにカンナが先に気付いてくれて、それをマリンに教えてくれたんだと思う。
「ご主人様、こんな目がお腐りになられて、頭が肥溜めで出来てる方と一緒に暮らしたくありません。ゴミと間違えて、潰してしまいそうです。」
そうマリンが言うと、見覚えのあるレベル5の奴隷が怒って、マリンを殴ろうとした。
それを止めようとしたが、マリンがアイコンタクトで、大丈夫。といった気がして、庇うのが遅れた。
そして、庇うのが遅れてしまった…。
殴ってきた奴隷の腕を掴み、曲がらない方向へ腕を曲げた。腕の骨が出ていた。
全然、大丈夫じゃないじゃん。
初めから、マリンが当たる事なんて心配してない。マリンがやり過ぎるのを心配していた。
別にその奴隷がどうなろうが、どうでもいいが、こんな事でマリンのジョブが変わるのが嫌だった。
奴隷はギャーギャー言っていたが、シカトして、
「…それと奴隷商人。あなたの教育もゴミね。レベルが少し高いからと言って、主になるかもしれない人に━━それにレベルが高ければ良いってものではありません。━━」
奴隷商人に説教をしていた。
自分にされた事は少しで、俺への無礼の説教が長かった。
恐る恐る、マリンのジョブを確認したが、なにも変わらなかったので、正当防衛なのかな。と一安心していた。
説教の間に、奴隷の腕を女将さんが治してあげていた。説教つきで…。それをエリーが見学していた。カンナは我関せずでウトウトして、船を漕いでいた。
そうなると、周りの目線が俺に向いた。
俺はマリンが俺の為に怒ってくれて、嬉しい気持ちと、周りの目線が痛い気持ちで、よく分からない感情になった。
それで、俺の親しい人が俺と同じ目にあったらを想像した。
そして、面倒臭いから怒りはしないが殺すかな。と考えてしまった物騒な自分に驚いていた。
それに、こんな状況、どうしたらいいか俺にも分かるか!!と思い、カンナを起こす仕事という、大義名分で逃げた。
それから、女将さんが奴隷を完治させて…いや完治はとっくにしてたので、女将さんの説教が終わって、
「マリン、これ以上はいいだろう。こんな事で営業妨害して、ジョブが変わったらバカらしいよ。」
自分の師匠から言われたので、マリンはまだ言い足りない感じだったが、これくらいにしときます。と言って、その奴隷商店の場所から出ていった。
すると、他の客も出ていった。
それから、そこの商店に訪れる人は、0ではないが、他と比べると明らかに少なかった。
次の奴隷商店では、隣の惨状を、見ていたからかは分からないが、前の商店とは全然違った。
それから、奴隷商人はマリンの顔をチラチラ見ながら、紹介してくれた。
それに、マリンの説教が始まる気配がしたので、
「すみません。少し教えて頂きたいんですけど…」
と少し大きな声で言い、その商人の耳元で、
「マリンをチラチラ見ないでくれ。あなたも説教聞きたくないでしょう。俺も、俺にされてる訳じゃないけど嫌なんです。」
話すと、それからはマリンを見る事がなくなり、無事に説明が終わった。
それから、奴隷の人達と話したりした。
奴隷達と話しが終わって、周りを見るとマリンをチラチラ見ている人が多かった。
それで、なるほど。商人と周りの人は、マリンの総評みたいのを欲しいのかと思い、「マリン、ここの奴隷はどう思う。」と聞いてみた。
すると、周りの人は、気にしてない風に装っていたが、なんとなく、マリンの発言を待ってるみたいだった。しかし、奴隷商人は顔が青くなって、唾を飲み込んだ。
…あれ…。奴隷商人は総評欲しかった訳じゃなかったのか?と考えていると、
「ここの奴隷は、しっかり教育されてますね。特にこの方は、レベルはまだ3ですが━━。しかし、少し残念なのは、奴隷商人が━━。」
マリンの総評が終わり、次の商店に向かうと、周りの人が大半ついてきた。
残りは、マリンが薦めていた奴隷や、奴隷商人と話をしていた。
どの店もこんな感じで、見て回り、オークションが始まった。
シンツーは、マリンが腕を折った奴隷を落札していた。
しかも、結構な額をコールして…。
シンツーは、いきなり大きな額を言うという、マナー違反をしていたが、多分、コールした額の半分くらいでも落札出来たと思う。
俺と同じように考えていたのか、周りはマナー違反にも関わらず、笑顔で拍手していた。
それに、シンツーは笑顔でお礼を言っていた。
なにも知らないって幸せなのかもな。と思った。
それから、俺がいいなと思ってた奴隷達は、やはり、マリンも良いと思ったようで、総評の時に、良い奴隷として名前が出ていた。それの効果か分からないが、高い額で落札されていった。
最初の奴隷商店は、シンツーが買ったレベル5以外売れ残ったか、最低落札額かそれに少し値段が乗るくらいだった。
もちろん、自分がいいな。と思った人を、マリンに悪く言うようにする方法を考えたが、結局、入札するとバレるし、なにより、なんか卑怯な気がして、それはしなかった。
それで、俺の初オークションは、俺はなにも買えなかった。普通なんか買うだろう。と自分自身に突っ込みたかった。
だけど、カンナに似てると、思った人がわかって、凄くスッキリした。ずっと気になっていたのだ。
それだけでも意味はあった。
マズイ…。俺は買えなかったが、マリンが入札した厄介事の卵は、どうなったんだろう。と思い、宝飾品のところに行くと、《売約おめでとうございます。マリン様》と書かれていた。
マリンは凄く嬉しそうだし、どうするか…。と頭を悩まされていた。
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