責任と大人と子供
※少し長いです。
マリンの父親は、俺を見るとビックリしていた。
マリンの父親は、痩せて、少しハゲてやつれていた。それを見て、俺もビックリした。
それから、俺と喋ろうとしていたが、昨日、裏切られてしまった感覚だったので、ムカついていて、無視した。
俺が無理だと分かると、マリンに話しかけていたが、目線にもいれず、いない者として、扱っていた。
その後、師匠としばらく喋って、帰っていった。
マリンの父親の後ろ姿は、寂しかった。
1ヶ月半も、こんな感じだったのか…。
それはマズイ気がして、マリンに思いきって聞いてみた。
「マリン、マリンの父親とは、どうなっているんだ?関係ないと言われれば、そうなんだけど、出来れば教えてほしい。」
「私の事で、ご主人様が関係ない。そんな悲しい事、言わないで下さい。あと、あの人は父では、ありません。」
そんなに、冷めた言い方、初めて見た。
「えっ…ごめん。それと、マリンの気持ちは嬉しい。じゃあ、教えてくれる?」
「ご主人様…ご主人様は、あの人がしたことを許せるんですか?」
あの人になってる…。前は、父様だったのに…。
ここは、嘘を言っても意味ないな。
「正直言うと、俺は、まだ許せてない。昨日、裏切られた感覚だし、あんな不意討ちみたいな事は…。でも、マリンはそろそろ許してほしい。きっと、マリンの…ターナさんも、マリンの事を思って、あんな事をしたと思うんだ。せっかく近くにいるのに、そんなもったいない事は、しないでほしい。ターナさんは、正直どうなってもいいんだけど、もし、このまま別れてしまったら、マリンは後悔すると思うんだ。その時に、マリンの悲しむ顔を見たくない。」
普通は、許すのかもしれないんだけど、俺にはまだ無理だった。だから、正直な気持ちを言った。それと、マリンの父親を名前で言った。なんとなく、そうした方がいい気がした。
「それでこそ俺の弟子だ。」
正直、俺はなにが?と思った。
師匠は、言葉が足りない。俺の発言に、褒められる要素あったか?と疑問に思った。
だが、「ありがとうございます。」とお礼を言った。
きっと、どこかに褒める要素があったんだろう。聞いたら教えてくれるだろうが、それで分かるとも限らない。分からないと不機嫌になるので、聞かないという選択をした。
褒められているんだから、別に良いだろう。しかも、戦闘に関する事ではない。
怒られた時や戦闘に関する事は、また、同じ失敗をするのが、怖いし、戦闘が有利になるので、理不尽に怒られながら、しっかり聞いている。
閑話休題。
師匠がマリンに、話しかけた。
「マリン、今すぐに許さなくて良い。だが、許されるようと、努力している人に、とりつく島がないのは、どうなんだ?結果論だが、お前達の被害は少ない。それなら、話くらい聞いてやっても、罰は当たらないんじゃないか?」
「ご主人様が、大変な目に会いました。一緒に冒険できなかったし、夜も…」
自分で気づいて、顔が赤くなって、その先は言わなかった。
楽しみにしていたのか。男冥利につきるな。って、そんな事は、今はどうでもよかった。
「だから、結果論って言っただろ。今、ジンは元気だ。」
なるほど…。確かに、俺達の被害は、さっきマリンが言った事くらいだ。
それに対する仕打ちが、絶縁では、かなり重い気がする。
話してないから、分からないが、師匠が庇うのなら、きっと、反省しているんだろう。見た目も、変わっていたし…。
もしかしたら、事情があったのかもしれない。反省し過ぎて、追い詰められてるのかもしれない。
話してないから、こういう風に、想像する事しか出来ない。
正直、許せてないが、俺が無視するのは違った。話を聞く事くらいはやるべきだった。と、もうすぐで、23歳になる俺が、自分はまだまだ子供だったと、反省した。
師匠は俺にも間接的に、言っているんだろうな。と思った。
だが、師匠に納得出来ない事がある。
俺にも、マリンみたいに分かりやすく、教えてくれ。俺の願いは、きっと誰にも届かない…。
閑話休題。
説得された俺とマリンは、マリンの父親の元へ向かった。
マリンの父親は、自分の商店にいた。
受付に行くと、商店長室に、通された。部屋に入り、
「話は聞いてあげます。なんですか?」
敬語なんだけど…全然、敬ってない…。
「わ、私も、無視したりして、すみません。正直言うと、まだ許せてませんが、話を聞きにきました。」
この話でマリンの父親に、俺の事を「俺」とは言えなかった。
「ありがとう。まずは、謝らせてほしい。申し訳なかった。」
「正直、許せてはないですが、謝罪は受け取ります。それと、自分に聞かせられない話があるなら、席を外しますが…」
「いや、ジン君にも…いや、ジン君にこそ、私の言い訳を聞いてほしい。」
「わかりました。」
意を決したように、喋り始めた。
「ガイゼル様達から、2ヶ月くらい前に、レベル5になったら、マリンをパーティーに迎えたいと、要請が来た。間違ってほしくないが、私の意思で、ガイゼル様のパーティーに、入れようとしたんだ。脅されたりはしていない。理由だが、まず、ガイゼル様達が、あんな人達とは思わなかった。ボルドー様のライバルだと聞いて、ボルドー様みたいな、人格者だと思っていた。強い人達の方が、娘が安全に冒険できるとも考えた。」
マリンが、余計なお世話。と、騒いでいたが、落ち着かせて、
「私じゃ、ダメだったんですか?」
怖いけど、聞いた。
「ダメではないよ。ジン君、君は良い人だ。ただ、ジン君は、マリンと、これからどうする気なんだい?冒険者としてではなく、男と女としてだ。結婚とか、考えてくれてたかい?私には、その話題から逃げてるように感じた。マリンを奴隷から、解放してくれた事には感謝している。感謝しているが、解放したのは、マリンや私達のためって思いもあったと思うが、ジン君は心のどこかで、マリンという女性に責任を、持ちたくないように見えてしまったんだ。」
涙を浮かべながら、話してくれた。
俺は、なにかに殴られたように感じた。
すぐさま否定したかったが、出来なかった。もう少し前なら違ったが、俺って最低だ…。
責任を持ちたくない訳ではない。ただ、これから俺の元に厄介事が降ってくる。それに、マリンが巻き込まれて、大変な目にあったら、それで嫌われたら、どうしようもなくなったら、それらを考えていた。
これは、言い訳だな…。今日までは、純粋にパートナーになってほしかった。
でも、ラティア様のメールを見て、俺の奴隷になったせいで、と考えたくなかった。それでいて、今の関係はそのままで、という自分勝手な思いがあった。
今は責任から、逃げようとしていたのかもしれない。
そんな事を考えてると、
「そんな事、父さんに言われなくても、薄々感じていたよ。だから、私は、奴隷から解放されたくなかった。でも、師匠からお願いされて…」
マリンが泣きながら、言っていた。
マリンもそんな風に勘違いさせてたのか…とショックだった。
だけど、ちゃんと言ってこなかった俺の責任だ。
マリンの父親が、聞いてられなくなったのか、
「マリン、お前がジン君を好きな事は知っている。知ってるからこそ、このまま、ジン君の側にいるのは、不幸になると思ったんだ。」
「そんな事ない。ご主人様の側にいるだけで…」
俺も、聞いていられなくなり、
「マリン!マリンちょっと待って、ターナさんも少し待ってください。」
俺も含めて落ち着かせた。その後、マリンの父親に、この部屋は、盗み聞きや盗聴のモン具の心配はないか、確認した。
「…これから話す事は、本当の話です。ターナさん、マリンと将来、結婚したいと願っています。出来れば、カンナも一緒にです。だけど、恐らくこれからの私の人生は、今回とは比べられない、大きな問題が起きます。起きないように、努力しますが、回避できない問題が起きるかもしれません。結婚していたら、その問題で、マリンやカンナ、私達の子供、もしかしたら、ターナさん達も狙われたり、大変な目にあうかもしれません。それが怖くて、私がそんな問題を、問題と思わなくならないくらい、強くなってから、結婚したいと考えてました。ただ、ターナさんの言う通り、責任をもつ事が今はできませんでした。それと、私がマリン達を解放したのは、奴隷としてではなく、パートナーとして接してほしかったからです。それだけは、信じてください。」
マリンの父親は、なにも言わず、俺を見ていた。
マリンの方を向いた。
マリンは、嬉しくてか、悲しくてかは、分からないが、座りこんでいた。涙を流しながら…。
俺は、跪いて、マリンに目線を合わせた。
「マリンは、俺の事、凄い人って思っているみたいだけど、俺は臆病なんだ。大事な人が、俺のせいで悲しまないか、嫌われないか、そして失ってしまわないか、ってさ。マリンの事、好きだから、大好きだから、失ってしまったら、正気を保つ事が出来ないと思う。こんな情けない俺で、危険な目にあうかもしれないけど、これからもついて来てくれる?」
自分の弱いところと一緒に、正直な気持ちを吐露した。
マリンは、涙を流しながら、笑顔になって、
「前にも言いましたが、私から去る事はありません。あと、私もご主人様を失ったら、正気を保てません。だから、気をつけて下さい。」
ターナさんがいたが、そんな事、関係なしでマリンを抱きしめた。
「ありがとう。マリン。」
感謝を言って、マリンを解放してから、ターナさんの方を向き、
「…ターナさん、荒唐無稽な話に聞こえたと思います。ただ、この事は、誰にも言わないで下さい。本当に狙われるかもしれません。」
俺をじっと見た後、なにか納得した顔になった。
「本当にすまなかった。私の勘違いだったようだ。君は、マリンや私達の事を本気で思っていたんだね。思っていたからこそ、深い関係になれなかったんだね。だが、ジン君。君は、もう少し周りを頼っても良いと思うよ。きっと、ボルドー様やアンナ様も頼ってくるのを、待ってると思う。」
信じてくれた事は嬉しかったが、表面には出さなかった。
なにも、思ってない風を装って、
「私もあの2人に頼りたいですよ。ただ、詳しい事は話せなくて…話もしないで頼る事なんて、できません。」
「そうかな。ボルドー様もアンナ様も言うだけ、言ってみたらどうだい?ダメならダメでいいじゃないか。それを断られて、君に困る事があるのかな?言うだけタダって言葉は、あまり好きじゃないけど、君とあの2人の関係なら、良いと思うよ。」
「言うだけタダって言葉は嫌いなのに、俺達なら大丈夫ってどういう事ですか?」
「それは、初対面や親しくない人に、言うだけタダと思って、無茶な事を言う人がいるだろう。確かに、お金は減らない。でも、言われた人の心証が、悪くなるかもしれない。私は商人だからね。それは困るからかな。でも、君達にそんな心配はないんじゃないかな?」
どういう事か、あまり分からなかった。商人だから、言うだけタダはよく使うんじゃないのか?
だが、確かに、師匠や女将さんに言って、断られてもあまり関係性は、変わらない気がする。
「ありがとうございます。正直、ターナさんの言う事は、理解できなかったですけど、師匠や女将さんに、相談したいと思います。…正直、まだターナさんに対して、モヤモヤした気持ちがあります。でも、話して良かったとも思いました。早くこのモヤモヤした気持ちがなくなるように、努力します。」
「ジン君。私に対して、モヤモヤした気持ちをなくすのは、私がしないといけない事だ。私が君達の信頼を裏切ったからね。私への信頼が回復すれば、そのモヤモヤはいつか、なくなると思うよ。」
そういうものなのか?
よく分からなかったが、それは俺がまだ子供だからかもしれないな。23歳って、まだ子供なのか…ただ単に、俺が子供なだけか…自分で言うのもなんだけど、恐らく後者だな。
早く、立派な大人になりたいな。
そんな風に思うって事が、子供の証なのかもな…。
※読み直すと、まだおかしい所があって、なかなか辛いです…。
あえて、よく分からない表現にしているところもあって、そこまで、間違えて直してしまい、ネタバレっていう事態を恐れています。だから、開き直って次話を載せていきます。
それに伴い、しばらくの間、自分で読み直す事もやめます。そうしないと、いつまで経っても、次話を載せれないので…。
自分勝手で、すみません。質問には、ネタバレでない限り、お答えします。
そんな作品で、そんな私ですが、これからも読んで頂ければ幸いです。
出来れば今日中に、もう1話載せます。




