11話
8月16日(日)午後10時
田中宅
「お母さん、悠斗寝た?」
「ええ⋯はしゃぎ疲れたのか、ぐっすり⋯」
「⋯じゃあ、お父さん⋯説明して」
「説明って、何を?っていうか、美咲⋯何を怒ってるんだ?」
「っ⋯はぐらかさないで!」
「直樹さん⋯悠斗から、目を離したの?」
「⋯ホントに、何の事?」
「悠斗、迷子になったんでしょ!?お父さん、何してたの!?」
「⋯いや、ちょっと⋯ホントに話が見えないんだけど⋯悠斗が、迷子⋯?」
「⋯違うの?」
「そんなわけないじゃん!あの遊園地に、同じ年齢の同姓同名が居たって?」
「聞き間違いじゃないのか?」
「私もお母さんも、聞き間違えたって?」
「⋯それしか、考えられないだろ?」
「⋯そうね⋯聞き間違いなのか、同姓同名なのか⋯わからないけど、悠斗じゃないなら良いの⋯」
旦那が部屋から出て行くなり、娘が苛立たしげな声をあげる。
「あんなの、絶対ウソじゃん!」
「⋯それは⋯わからないでしょ?決めつけちゃダメよ⋯」
「わかるでしょ!私も、お母さんも⋯田中悠斗って、聞いたでしょ!?」
「⋯ええ⋯でも⋯」
「確かに、田中はどこにでも居るよ!?でも、同じ悠斗で⋯年齢まで一緒って⋯そんな偶然、出来すぎでしょ!?」
「⋯それは⋯」
「とにかく⋯!私、もう⋯お父さんの事、信じられない!」
「美咲⋯」
「大体、イタズラの事だって⋯!軽く考えすぎなんだよ⋯!お母さんの気持ち、全然わかってない⋯!」
「⋯ありがとう、美咲⋯」
自分の事を想って怒る娘を、そっと抱き締めた。
旦那に対する少しの憤りと、娘に対する大きな愛を噛み締めながら⋯




