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とらいあぐる  作者: おきゆむ
高校一年 夏
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93/104

どうした私?

あれからどれくらいの時間が経ったっけ…?


たしか、コウの初戦を観てた筈だ。


見事な二本先取だった。


それから…?


えっと…たしか…


と考えていると、面に強い衝撃を受けてハッとなる。


「面あり!」


主審の宣告に我に戻る。


しまった…もう試合が始まっているんだった。


すぐに残心を忘れずに構える。


「止め!」


相手に竹刀を構えたまま開始戦へと戻る。


…やばっ、一本取られた!


「始め!」


再開の合図に素早く身体を動かす。


相手の視線が私に追いついた瞬間、激しく動いて声を上げた。


「面あり!」


一本だ。


そして、私は次も胴に鋭い一閃を入れて、一本を取る。


…なんとか逆転勝ち出来た。


退場したあとですぐに面を取り、安堵の表情を浮かべる。


「大丈夫かちえ?何かあったのか…?」


すぐにコウが私に近寄って、心配な顔を浮かべた。


その横で相馬先輩も心配な眼差しを私に向けていたのだ。


まあ、あんな見事な棒立ちをしてしまったらこうなるか…


「…まあ、あったと言えばあったな。でも、大のことはちえの責任じゃない。あの騒動は裏で誰かがちえを嵌めようとして巻き込まれたものだ。ちえを助けようとして負った怪我だとしても、ちえの責任じゃないだろ?」


コウが様子のおかしい私に語りかける。


きっと、大が怪我をして初戦負けをしたことに、私が責任を感じていると思っているようだ。


違う…そうじゃない。


ん…?


いや、そうだ…それ以外何があるの私?


その瞬間、あの光景が頭の中に蘇る。


泣いていた大を斎藤さんが抱きしめていた光景を…


違う…!


別に…私はなんとも思っていない…ただ、少し驚いただけ…


「おい、ちえ。俺の話を聞いているのか?」


コウの声にハッとなる。


…また、ぼっーとしていた。


「…うん、聞いてるよ。分かってる…別に責任なんて感じてないよ。だから、大丈夫…心配しないで」


と精一杯の笑顔を作ってみせる。


「…あんなの見せられて心配するなと言う方が無理だろ。まあ、とにかく試合に集中しろよ?じゃあ、俺はそろそろ次の試合場へ向かうからな」


心配そうな顔をしたままコウが私から離れていく。


「私も行くね?なんとか初戦は勝てたけど、次は難しいかも…でも、目標は決勝で沖田さんと戦うことだから、次も負けられない。だから、沖田さんも試合に集中して、負けないでね?」


相馬先輩がそう言って、私の肩に手を置いてから踵を返した。


コウも相馬先輩も自分の試合があるのに、私の心配をしてくれている…


私、馬鹿だ…


相馬先輩の後ろ姿を見ながら、そう思った。


次の試合の前にコウの試合を観に行こうと思ったが止めておく。


コウなら次の試合はなんなく勝つ筈だ。


でも、三回戦はあの坂本…


その試合は絶対に観るつもりだ。


今はとにかく自分の心配をしよう。


次の試合場の前で待機する。


その試合場で行われている試合を眺めながらも、気づくと私は別のことを考えていた。


…大は泣いていた。


私の前でじゃなくて…斎藤さんの前で…


もし、斎藤さんより先に私が大の元に辿り着いていたら、大は私の前で泣いたのだろうか…?


そして、私は大を斎藤さんみたいに抱きしめたりしたのだろうか…


「沖田!」


面を抱えたまま、ぼっーとしていると私を呼ぶ声が聞こえる。


山崎先輩だ。


「何をしている?次はお前の番だぞ?早く準備しろ」


山崎先輩に言われて、慌てて面をかぶった。


「…大丈夫か沖田?ちゃんと試合に集中しろ。いいな」


山崎先輩が厳しくもどこか優しげな口調で私に言った。


次は三回戦…ぼっーとしていて勝てる相手じゃない…


と頭では分かっている。


でも、精神統一がまるで出来ていない…


こんな心が乱れたままで、私ははたして勝ち進むことが出来るの?


…一体、どうした私?


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