インターハイ個人戦予選
日曜日がやってきた。
今日は待ちに待ったインターハイの個人戦だ。
男子は団体戦に山崎先輩と三年、二年の構成で、今日の個人戦は大とコウが出る。
女子は私と相馬先輩だ。
関東大会の個人戦で腕を振るえなかった鬱憤をここで晴らす。
と意気込んだ表情で会場を見上げた。
「ちえ、そんなところで立ち止まっていないでさっさと会場に入るぞ」
前方にいるコウが私に呼びかけた。
男女同じ会場なので、新撰高校の剣道部員で固まって行動している。
なので、立ち止まって意気込んでいた私だけが置いて行かれていたのだ。
コウの指摘に慌てて、新撰高校の剣道部員のかたまりへと駆けていく。
その中に原田と谷くんはいない。
そのことにこの前の騒動は現実だったんだなと思えてくる。
山崎先輩が言った通り、あの日は練習を休んで正解だったと感じた。
翌日の練習で芹沢に木刀で戦った感触が手に残っていたのだ。
今はもう大丈夫だけれど大会があの騒動の翌日なら、私はきっと怖くて竹刀をまともに振れなかっただろう。
だから、山崎先輩の判断に感謝だ。
会場に入ると、既にほとんどの学校の部員が剣道着姿で待機している。
私たちも学校で剣道着に着替えてから、電車を使って会場にやって来た。
山崎先輩を先頭に私たちはあらかじめ決められた自分たちのスペースへと移動する。
すると、新撰高校のスペースの隣は海援高校だった。
「よっ、近藤と土方久しぶりだな?沖田も」
海援高校の部員の中から一人ひょこっと私たちの前に現れた。
坂本だ。
「…坂本」
私は敵を見るような目で坂本を睨む
「おいおい…そんな目で見るなよ。よく全国で一緒に試合した仲じゃねぇか?」
坂本が馴れ馴れしく私に近づいてきた。
すると、それを阻むようにコウが私の前に立つ。
「当たり前だ。ウチにとってお前はライバル校の生徒だからな」
「ちげぇねぇ。でも、沖田は違うだろ?俺は男子であいつは女子。戦わねーんだから馴れ合ってもいいじゃねーか?」
坂本がそんなことを言う。
「ここにもいたか…沖田さん凄い…」
私の隣で相馬先輩が呟いた。
「止めろ坂本。他校に迷惑を掛けるな」
と海援高校の部員の中から、背の高い部員が坂本の首根っこを掴んだ。
「げっ、沢村パイセン!」
坂本が後ろを見上げながら叫ぶ。
「げっとはなんだ。とにかく早くこっちに来い。お前の代わりに別の部員を出場させるぞ?」
と言って坂本を連れて行った。
「…海援高校二年の沢村。坂本も強いが、沢村もかなり手強い…海援高校はどうやらあの二人が出るみたいだな。
坂本が連れて行かれた様を見ながら山崎先輩が言った。
私たちの一つ上の沢村も全国の常連だったから、私もその強さはよく知っている。
「近藤、土方。とにかく今日は思いっきりやれ!俺たちがしっかり応援する!」
山崎先輩が大とコウに近づいて檄を飛ばす。
「はい!」
大とコウが同時に力強く返事をした。
「沖田と相馬も頑張ってこい!他の女子は応援をしっかり頼む」
男子に続いて、山崎先輩が女子にそう言った。
「はい!」
女子全員が揃って返事をした。
すると、後ろから肩を軽く叩かれる。
振り返ると制服姿の斎藤さんの姿があった。
「頑張ってね沖田さん。目指せインターハイ優勝」
頑張ってというジェスチャー付きだ。
「ありがとう斎藤さん。頑張るね」
と笑顔で応えた。
…インターハイ優勝。
伊東さんが私に提示した条件だ。
きっと彼女のことだ…もし優勝出来たら、その時は剣道部に入ってくれるだろう。
「さあ、沖田さんそろそろ準備するよ?」
「はい!」
相馬先輩に言われて私は力強く頷いた。




