反省してます
校門を出るとコウが何か言いたげな表情で私を見てきた。
「何?どうかしたコウ?」
首を傾げて、コウに訊いた。
「…いや、昼休みに武田先輩のところに行ったんだろ?」
少し後ろめたそうにコウが切り出す。
「えっ!?もしかして、また後をつけてたの!」
思わず声を上げた。
「つけてない!今回はやめといた…俺も昼休みに武田先輩に昨日のことでお礼を言いに北校舎へ行ったんだ。すると、ちえの姿を見かけて…大人しく帰ったけど、何の話をしていたか気になってな」
コウが頬をポリポリと掻く。
「…私も昨日のことのお礼を言いに行っただけ」
と少し嘘をつく。
私は本当にお礼を言いに行っただけだ。
ただ、武田先輩からデートに誘われたことを黙っているだけ…
「そうか…そうだよな。ん、大どうかしたか?」
コウが私を挟んだ奥にいる大に話しかける。
たしかにさっきから大は一言も発していない。
「…何でもない。少し考え事をしていた…」
と私から目を逸らす。
変な大…
「にしても武田先輩があんなにも強いとは夢にも思わなかった。あの芹沢を一撃だよ?凄くない?」
昨日の光景を思い出して、二人に言った。
「ああ…流石はヤクザの跡取りだ。いや、そんな言葉では片付けられないくらいの強さだった。きっと立場上、幼い頃から鍛えてきたのだろうな」
コウが他人をこんなに褒めるのは珍しいなと思いながら、話を聞いていた。
「武田先輩って剣道もするのかな?もし、そうなら一度手合わせしてもらいたいかも」
私の発言に大とコウが同時に私の方を見た。
「…阿保だろ?何でそういう発想になるんだ?少しは謙虚になれ」
と隣でコウが呆れる。
「…そういうことを簡単に言うのはやめとけよ。たしかにあの人には助けてもらった。俺も感謝している…でも、ちえがこれ以上、武田先輩に近づくのは良くないと思うぜ」
大が私から視線を外しながらそう言った。
「何?それは武田先輩への偏見?」
大の発言に思わず食ってかかる。
「…俺自身は別に武田先輩の家がヤクザとか気にしていないけど、他人はそうは思わないだろ?ちえと武田先輩が親密になれば周囲がちえを同じような目で見てくるかもしれない。そうなって困るのはちえだ」
大が珍しく真剣に語る。
「俺も大の意見に賛成だ」
「えっ?コウまで!」
「大はちえのことを思って言っているんだ。正直、ちえは誰彼かまわず接する癖がある。見ていてとても危なっかしい」
コウの言葉にうっ…となる。
「分かる。ほんと後先考えずに誰にでも話しかけるし、相手との距離感がちえは分かっていないんだよなぁ」
と左右から責められる。
「…突然何よ。それも二人して…昨日のことなら反省してます」
と仏頂面を浮かべた。
「いや、俺は昨日のことと言うよりはむしろ…」
大がかぶりを振りながら言った。
「…むしろ?」
大の方を見ながら訊き返す。
「…何でもない。とりあえず、俺は昨日のことだけを言っているんじゃなくて、ずっとちえの行動は危ういって言ってるんだ」
何かを隠すように大が話す。
「そうだ。大の言う通りだ。ちえはもう少し考えて行動した方がいい」
とコウまで私を責める。
それに対して私は頬を膨らませた。
…とは言え、二人とも私を心配してのことだ。
「…はい、分かったわよ。これからはもう少し慎重に行動します。二人にこれ以上迷惑かけないようにね」
と素直になり切れない態度で私は二人より先に帰路を歩き出した。




