競争率の高い女の子
学校に着くまでに、大と一緒にちゃんと事のすべてをきちんと斉藤さんに説明した。
「沖田さんは女の子だよ!もう絶対にそんな危ないことはしないで!」
と斉藤さんに叱られてしまった。
男にそう言われてしまうと反発してしまうけど、女子に言われたら素直にそうだよねってなってしまう。
特に斉藤さんは…
でも、なんだかお母さんに怒られた気分になって、ちょっと嬉しかった。
「なぁに、ニヤけてるんだ沖田?」
自分の教室に入り、席を座った途端に頭上から声が降ってくる。
見上げると私同様に絆創膏を貼った原田の顔があった。
「原田!?何でここにいるのよ?アンタはこのクラスじゃないでしょ」
と原田を睨む。
「…分かってるけどよ。だって、心配じゃねぇか?昨日は大丈夫でも、今日になってってあるし…」
原田が少し恥ずかしそうに言った。
…こいつも私を心配してくれていたんだな。
と思うと邪険に扱ったことを心中で詫びた。
「…大丈夫。アンタの方こそ大丈夫なの?」
と身体中に貼られている絆創膏やアザを順番に指差した。
「ああ、大丈夫だ…って言いたいとこだが、あんまり大丈夫じゃねぇ…」
原田がそう答えた瞬間、私は慌てて席を立った。
「そうなの!?どこか痛いの!?」
「声がでけぇよ沖田…」
原田の注意にハッとなる。
すぐに口を押さえて席に座った。
「身体は大丈夫だ。ただ、周囲の目がな…また喧嘩したのかって目で見られている気がして…剣道部に迷惑がかからないか心配でよ」
原田がそう言って頭を掻いた。
…一丁前に剣道部員してるじゃない。
と自ずと笑みが溢れた。
「他の人がどう思っても、私はちゃんと知ってるから気にすんな。誰かを守るために作った傷なんだから」
そう言って、原田の腕を軽く叩いた。
すると、原田が私から目を逸らす。
「…そういうとこだぞ」
「えっ?何が?」
と思わず首を傾げた。
「俺が沖田を好きになってしまうところだよ…」
原田がそう呟いて、足早に教室から出て行く。
その様を私はぽかーんと眺めていた。
「顔があかーい」
突然の声にビクッとする。
気づくと、私の右側で誠子が顔を近づけて目を細めていた。
「誠子!?いつからいたの!」
思わず席から立ち上がり、誠子から距離を取る。
「ほんのちょっと前。ちえが立ち上がってたところからばっちり見てた」
と答えながら、誠子が空いた私の席に座る。
…くっ、見られたくないところを見られてしまった。
「原田くんは相変わらずちえのことが好きなんだ。なんというか随分と競争率の高い女の子を選んじゃったね可哀想」
誠子が哀れんだ様子でそう語る。
「…競争率の高い女の子?誰が?」
首を傾げて誠子に訊いた。
すると、誠子が大きなため息を漏らす。
「…当人が自覚ない分、周囲が不憫で仕方ないわ」
誠子はそう言ったあとで、すぐに席から立ち上がり、私にずいっと顔を近づけた。
思わず、仰け反る。
「まあ、そんなことは良しとして、何その頬は?」
目の前にある眼鏡をかけた誠子の顔が怖い。
堪らず、絆創膏が貼ってある左頬を手で隠す。
「いや…実は…」
観念して話そうとした矢先、誠子が私の口の前に自分の手を翳した。
「何があったかは話さなくてもいいよ。ただ、約束して?あんまり無茶なことはしないって…友達として本当に心配してるんだからさ」
誠子が少し悲しげにそう言った。
「…ごめん。うん、もう無茶しない。ありがと誠子」
素直に謝る。
「よし」
と誠子に笑顔が戻った。
「ところで渚は?」
誠子と一緒にいるイメージがある渚の姿が見えない。
「あれ?いないね。いつもなら、もうとっくに来ていると思うんだけど」
誠子がキョロキョロと辺りを見渡した。
「休みかな?」
絆創膏が貼ってある頬に触れながら誠子に言った。
渚にも誠子同様にこの傷のことを問われるんじゃないかと思っていたからだ。
「うーん昨日は特に体調が悪そうには見えなかったから、多分来ると思うよ。ちょっと遅れているんじゃない?」
誠子の言葉にそうだねと答え、そのあと再び話題が原田に戻ったので、一限目が始まるまで私の顔は少し赤くなっていたに違いない。
そして、一限目が始まる間際に渚が教室へ入ってきた。




