腑に落ちない
「私の行動が軽率だった…あの時、野口と平間を追いかけたりせずに誰かに報告するべきでした」
私の後先を考えない性格を心から反省した。
「そうだな…せめて俺や大には一言欲しかったな」
コウの言葉にごめんと謝る。
「…まあ、過ぎたことは仕方ない。次からはもうちょっと考えるんだな。しかし、今回のこの事件一つ腑に落ちないことがある…」
永倉先生の顔が少し険しくなる。
「腑に落ちないこと?」
私は首を傾げたくなったが、永倉先生に動くなと顔を押さえられた。
「ちえが巻き込まれたことですよね?」
コウが理解している様子で答えた。
永倉先生がこくりと頷いた。
「それは俺を誘き寄せるために、谷じゃなく沖田を選んだんじゃねぇの?」
治療を終えた原田が口を挟む。
「…ちえはあくまで野口と平間に連れて行かれた谷を助けるためだった。だから、ちえが巻き込まれたのはたまたまだって俺も思っていた…でも、谷は囮で本命はちえだ。問題は何でちえを選んだかだ」
とコウが深刻な表情で語った。
「…原田がちえを…好きだからだろ…?」
大が遠慮気味に発言した。
「ああ、だが何でそれをあいつらが知っていた?」
コウが神妙な面持ちで言った。
「…それはたまたま原田の告白シーンを見ていたんじゃね?」
大の言葉に私が原田に告白された時のことを思い出してしまった。
「…まあ、その可能性もあるが…今回はどうも誰かが裏で手を引いた気がしてならない」
コウの言葉に永倉先生と和兄が賛同するように頷いた。
「…じゃあ、誰かが私を陥れるために、アイツらに拐われるように仕向けたってこと?」
私の言葉に永倉先生が答える。
「…まあ、あくまで可能性だ」
「だったら野口と平間に問いただしたら分かるんじゃね?」
原田の言葉に永倉先生が首を横に振った。
「やめておけ。お前たちは大事な試合を控えている。それ以前にお前たちは健全なスポーツマンなんだぞ?これ以上は首を突っ込むな」
永倉先生の忠告に対して原田が納得するように分かったと返事をする。
「あとはこっちで調べてはおくから気にすんな」
和兄が更に私たちが変なことをしないように安心させる。
私のあとに大とコウが永倉先生に診てもらって、全員の治療を終えた。
谷くんは永倉先生が家まで送って行き、原田は一人で帰れると言って、普通に帰って行った。
私と大とコウは和兄と一緒に帰路へと就く。
その帰り道は和兄との懐かしい思い出話ですっかり盛り上がったので、今日の大変だった出来事が全て夢だったんじゃないかという錯覚を覚えた。




