一発ぶん殴ってやるつもりだったんだよ
…だから、和兄がやたらと私のことをあれこれ知ってたんだ。
原田に告白されたこととか、デートのこととか…
そう分かると急に腹が立ってきた。
「…おいおい、どうした?急に睨むなよ妹よ…」
私が睨んでいるのに気がついた和兄が言った。
「ところで和也さんって何で探偵やってるの?」
ソファに腰掛けている大が和兄に質問した。
その質問にそういえばそうだよねと賛同するように和兄を見た。
「睨んだと思ったら、今度は興味津々って顔かよ。忙しいなお前は…」
和兄が笑みを浮かべた。
永倉先生が少し心配した様子で和兄を見た。
「…別に隠すことでもないんでいいですよ。きっかけは親父だよ」
「…お父さん?」
思わず訊き返す。
「…ああ、親父のことを調べるために探偵を始めた。まあ、今となってはきっかけに過ぎないけどな…」
いつも家で馬鹿ばっかやってる和兄がそんなことを考えていたなんて、全然気づかなかった。
「お父さんのこと何か分かったの…?」
私の質問に和兄は首を横に振った。
「…いや、調べるのは調べたけど、今どこで何をしているかまでは分からなかった。というか…途中でどうでも良くなったってのが正解かな?…ここで…剣さんの下で探偵の仕事を手伝っているうちに仕事として探偵の仕事をやりたくなったんだ。だから、親父のことはどうでも良くなった…」
和兄の本音を初めて聞いた気がする。
というか和兄もこんな真剣な表情をするんだと、少し見直してしまった。
「…和兄はお父さんを調べてどうするつもりだったの?」
私はお父さんの記憶がない。
でも、達兄と和兄は違う…
だからこそ、私よりもお父さんに対しての怒りや憎しみがあるのかなと思ってしまう。
「決まってるだろ。会って一発ぶん殴ってやるつもりだったんだよ」
和兄の言葉に大とコウか笑った。
「和也さんらしいや」
「だな。達也さんなら言わない台詞だ」
「うるせぇよ…てか俺の話なんてどうでもいいんだよ。問題は今日のことだろ?」
和兄が本題に話を戻す。
「とりあえず、学校のことは気にするな。少し騒ぎなりかけたが、大したことにはなっていない。誰かに怪我のことを聞かれても適当に誤魔化しておけ。あと、山崎にはある程度は事情を説明しておいた」
永倉先生はそう話すと原田を処置し終えたから次は沖田だと、私の前に来た。
「山崎先輩…怒ってませんでした?」
下手すると週末のインターハイ予選の大会に出られなくなるところだったのだから…
「ああ、怒ってた」
永倉先生の言葉にそれはそうだと納得する。
「沖田が何者かに拐われたって知った時は血相を変えて怒ってたぞ。竹刀を持って行ってしまいそうだったから、ここは近藤と土方に任せてお前は主将として残れと指示した」
「えっ…?」
「…一見、アイツはクールな印象があるが、中身は凄く熱いやつだからな。本当は今ここにいてもおかしくはなかった。ほら、顔の傷を手当てするから動くな」
永倉先生の言葉に思わず目頭が熱くなる。
…たくさんの人に迷惑をかけた。




