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とらいあぐる  作者: おきゆむ
高校一年 夏
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78/91

探偵事務所

「永倉先生だ。あの人がこの場所を教えてくれた。事細かくな」


とコウが答える。


永倉先生が…


何でそんなことを知ってるのよ?


一体、あの人は何者…?


「あと、木刀を持って行けって、二本用意してくれた…て、いけねぇ木刀忘れて来た」


大が思い出したように地下に取りに戻ろうとする。


「いいよ。取りに行かなくて」


大が再び、チーム鴨のアジトに入ろうとした時、聞き覚えのある声がそれを止めた。


「か、和兄!?」


路地を抜けたところから和兄がこちらに歩いてくる。


何で和兄が!?


「ん?誰だこいつ?」


和兄を知らない原田が谷くんを支えながら、じろじろと和兄を睨みつける。


「私の兄貴」


私がそう言うと原田の表情が一変する。


「えっ、沖田のお兄さん!?」


原田の態度が急に変わった。


「誰?」


和兄が原田を指差して私たちに訊いた。


「同じ剣道部員の原田です」


コウが和兄に説明する。


「ああ、ちえに告白したっていうあの変わり者の」


和兄が納得したように頷く。


「何で私に告白するのが変わり者なのよ!てかいうか、何で和兄がここにいるの?」


私は和兄に歩み寄りながら問いただす。


「何でってお前たちを迎えに来たんだよ。そんな格好で学校なんて戻ってみろ、たちまち大騒ぎなるぞ」


和兄が真剣な表情で語る。


でも、派手な柄シャツに短パン姿のためか、その真剣さが全く似合わない。


「…しかし、ちえも俺たちもそれなりに怪我をしています。だから、ちゃんとした手当てを受けないと」


コウが私の隣まで歩いて来て、和兄に言った。


「分かってるよ。だから、迎えに来たって言っただろ?」


その言葉に目を丸くする。


「全員ウチにでも連れて行くの?」


「いいや、それも悪くはないが爺さん婆さんが心配する」


和兄が首を横に振った。


「なら、一体どこに行くのよ?」


怪訝な表情で和兄に訊いた。


「まあ、黙って俺について来い。大、木刀はあとでまた回収しておくから気にすんな。行くぞ」


と和兄が踵を返して、路地から通りへと出て行く。


「ち、ちょっと待ってよ!」


さっさと行ってしまう和兄の後を私たちは追う。


原田一人では怪我の酷い谷くんを支えながら歩くのは大変なので、大も一緒に谷くんを助ける。


通りに出るとその場所に見覚えがあった。


たしか学校の最寄りの駅の周辺だ。


印象に残る派手なカラオケ店の看板があるから間違いない。


和兄のすぐ後を原田と谷くんと大が、そのあとを私とコウが縦に並んで歩く。


怪我が酷い谷くんを原田と大が支えながらということもあり、和兄が割と歩くスピードを緩めながら進んでくれていた。


狭い通りを抜けて、大通りを学校と真逆の方へとしばし進むと和兄の足が止まった。


「ここだ」


と左の建物を指差して言った。


「ここの二階がウチの事務所だ」


と二階を見るがただ普通に窓ガラスが見えるだけで外見からは何も分からない。


「事務所?まさか、和兄って反しゃか…」


と私が言い切る前に和兄が突っ込む。


「違うわ!探偵事務所だ!」


「探偵!?和兄って探偵やってたの!?」


闇組織ではなくてホッとするも探偵という言葉に驚く。


和兄って何の仕事しているか知らなかったというよりか興味がなかったが、まさか探偵事務所で働いているとは思いもよらなかった。


…私はてっきりフリーターかと思ってたからだ。


「あくまで助手な。そんなことはいいから早く入れ、手当てすんぞ」


と和兄が建物の横にある階段を私たちを誘導するように上っていく。


原田は谷くんをおぶって階段を上り、その後ろで大が支えた。


三人が上り終えるのを見守ってから、私とコウもあとに続く。


階段を上がると扉にある文字が見えた。




永倉探偵事務所




…永倉?まさかね…


先頭の和兄が扉を開けて事務所へと入る。


続いて原田と谷くんと大が、そのあとで私とコウが中に入っていった。


「な、永倉先生!?」


中に入った瞬間、大の驚く声がした。


慌てて前を覗くと、窓際の前にあるデスクに永倉先生の姿があった。


「よう、全員無事か?」


と軽く手を上げて永倉先生がこっちを見た。


…どういうこと?


永倉先生が探偵?


「とにかく話はあとだ。手当てするから全員そこのソファに座れ」


と永倉先生が席を立つ。


私たちは言われるがままに部屋の真ん中にあるテーブルを囲むように置いてある四つのソファにそれぞれ腰掛けた。

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