お前の相手は僕がやろう
原田が抗議するように武田先輩に訴えかけた。
「原田の言う通りです。武田先輩がいくら強くても流石に芹沢とこの人数を相手にするのは酷ですよ」
コウも原田の意見に賛成した。
「俺もそう思います。俺たちも一緒に戦いますよ」
大もそう言って武田先輩を説得する。
しかし、武田先輩は首を横に振った。
「…君たちは立派なスポーツマンだろ?その技術を暴力に使ってはならないじゃないか?例え、それに理由があったとしても世間は許してはくれないよ」
武田先輩の言葉に大とコウの表情が曇る。
「大丈夫。そうならないように手は尽くす。だから、これ以上は首を突っ込んでは駄目だ」
そう言って武田先輩が大とコウの肩に手を置いた。
「なら、俺が一緒にやる!俺はコイツらとは違う!俺なら別に構わないだろ?」
原田が武田先輩の肩を掴んで言った。
「原田君ももう立派に剣道部の一員だろ?君が問題を起こしたと分かれば決して君だけの問題では終わらない。下手したら日曜日の試合に剣道部全員が出れなくなり兼ねないよ?」
武田先輩の脅しのような忠告に原田がゆっくりと武田先輩の肩から手を外した。
「おい!いつまでやってんだ?何人でも構わねぇから早くやろうぜ!」
芹沢が苛立ちの声を上げる。
それに応えるように武田先輩が一歩芹沢へと近づいていく。
「待たせたね。お前の相手は僕がやろう」
武田先輩がそう言って、芹沢と対峙した。
武田先輩の言葉を受けて動けなくなった大とコウと原田は少し後ろでそれを見守っている。
「お前一人か?…まあいい。新見を一撃で倒したとあればそれなりに楽しめるだろうからな」
芹沢がそう言って笑みを浮かべた。
「どうかな?楽しめる程の時間があるかどうかは保証出来ないね」
武田先輩が芹沢を挑発する。
その挑発に乗るように芹沢が攻撃を仕掛けた。
芹沢の鋭いパンチが武田先輩を襲う。
しかし、その攻撃をいとも簡単に武田先輩が躱した。
芹沢が構わず次々と武田先輩に攻撃を仕掛けていく。
その動きはボクシングだ。
武田先輩は全てを軽やかに躱しきり、僅かな隙を突いて蹴りを芹沢の腹にお見舞いした。
しかし、芹沢が倒れることはなく、そのまま武田先輩の右脚を両手で掴んだ。
そして、芹沢は瞬時に武田先輩の制服を掴み取って背負い投げの体勢に入った。
ボクシングの次は柔道…
芹沢の幅広いポテンシャルに武田先輩が心配になる。
だけど、その心配はすぐに解消された。
一瞬、投げ飛ばされたと思えた武田先輩は体勢を立て直して地面に叩きつけられるのを回避したのだ。
「なっ!?」
その動きに芹沢が思わず驚きの声を上げる。
武田先輩は着地すると同時に芹沢に向かって動いた。
そして、芹沢のでかい顔面を覆うように右手で掴み、瞬時に脚を引っ掛けて芹沢の体勢を崩して、その勢いで芹沢を頭から地面に叩き倒す。
そのあまりにも凄い動きを私はただぽかーんと眺めていた。
…凄い!
流石にタフな芹沢も後頭部から地面に叩きつけられて、ピクリとも動かなくなった。
まさか死んでないよね…?




