甘く見ると痛い目に遭うわよ
「…やめろ。お前が敵う相手じゃない」
コウが自分の頭を押さえながら私を止める。
しかし、私はコウの言うことを聞かずに芹沢の方へと向かった。
芹沢も木刀を肩に乗せながら私の方へと歩いてくる。
「仕方ねぇからお前のスタイルに合わせてやる。まあ、女というハンデだ」
芹沢がニヤリと笑う。
「甘く見ると痛い目に遭うわよ」
芹沢が目の前まで来ると、木刀を構えた。
竹刀より重い木刀だが、これくらいならパフォーマンスは然程下がらないだろう。
私は声を張り上げて芹沢に向かっていく。
決してがむしゃらではなく慎重に…
私の攻撃を芹沢が木刀でいとも容易く受け止めた。
芹沢が凄い力で押し返してくる。
しかし、それくらいの力だということを想定していたので、体を右に逃がし、弾き飛ばされるのを防ぐ。
そして、芹沢の左側に回り込む。
芹沢がすぐにそれに反応する。
だが、それも予測済みだ。
更に私は状態を落として芹沢の視界から外れた箇所に移動する。
芹沢が私に視線を向けるよりも早く私は芹沢の脇腹に一撃を加えた。
堪らず芹沢が前へと崩れ落ちた。
いくら私の攻撃が弱いからといっても流石にこれには芹沢もダメージを受けた筈だ。
芹沢がすぐに体勢を整えて私の方へと向き直る。
「…やるねぇ。流石に今のは効いた。さっきの言葉は取り消すぜ。お前の攻撃は単なる女で片付けられるもんじゃないな…」
そう語る芹沢の表情から真剣さが窺えた。
芹沢が本気を出してくる…
すぐに木刀を前に構えた。
今度は芹沢から攻撃を仕掛けてきた。
重い攻撃を次々と打ち込んでくる。
私はそれをなんとか全て捌き切った。
確かに重い攻撃だが、日頃から大とコウと手合わせをしている私にとってはただの重い攻撃でしかない。
芹沢が剣道の経験者とはいえ、やはり鈍っている感が窺える。
だから、攻撃一つ一つに鋭さがない。
芹沢の攻撃を捌きながら、反撃のチャンスを待つ。
しかし、なかなか芹沢の猛攻が収まらない。
なんてタフなの…しかも木刀をまるで木の枝のように簡単に扱っている。
…やはり芹沢は規格外の強さだ。
しかも、私に合わせて剣道以外は封印して…
だけど、私はこんな強敵を前にして自然と笑みを浮かべしまっていた。
こんな状況でも私の剣道馬鹿の血が騒ぐ。
…楽しい!
素直にその感情が抑えきれない。
芹沢の攻撃に少し慣れを感じた頃、僅かにそこに隙を見つけた。
その瞬間、私は自分でも驚くほどの動きをする。
芹沢の木刀の柄頭に自分の柄頭をぶつけて芹沢の木刀を宙に浮かせたのだ。
そして、木刀をすぐに上へと上げて、先端を芹沢の喉先に突きつけた。
芹沢が喉元を押さえながら声にならない悲鳴を上げて膝から崩れていく。
蹲るように芹沢が何度も咳き込んだ。
その様子を少し距離を置いて身構えながら窺う。
「…全く…無茶はするなと言っただろ?」
横から声が聞こえて思わずビクッとするも、声の主がコウだと分かると安堵する。
「…コウ!」
「…でも、良くやった。ここからは俺たちがやるから安心しろ」




