剣道とボクシングと柔道
そのパンチに素人でもそれがボクシングによるものだと分かった。
更に芹沢は一瞬怯んだコウの腕を掴み、手に持っている木刀を捨て、コウを投げ飛ばす。
コウが背中から地面に叩きつけられる。
背負い投げだ。
「コウ!」
居ても立っても居られなくなり、その場に行こうと動いた。
「来るな!」
立ち上がった大が私に叫ぶ。
その鬼気迫る声にビクッとして立ち止まる。
「ほぅ…立ちやがった。なかなかやるじゃねぇか」
芹沢が落とした木刀を拾い上げて、大に放り投げた。
大は少し驚いた表情でそれを受け取る。
「立ち上がれたご褒美だ。ほら?早く仕掛けて来いよ」
芹沢が余裕な口調で大を挑発する。
その芹沢の自信に大が少し臆するのが、ここから見ていても分かった。
…強過ぎる!
アイツは剣道だけではない。
ボクシングと柔道も経験している。
しかも、それを活かして喧嘩慣れをしているではないか…
正直、ただ剣道だけをしている大やコウには勝ち目がないように思えてきた。
逆に喧嘩だけしか経験のない原田も…
芹沢は束になってどうにか出来る相手ではない。
原田が言った通り、アイツは危険過ぎる…
正直、私が出て行ったところで、悔しいけれど足手まといになるだけかもしれない…
「どうした?掛かってこないのか?ならこっちから行くぞ」
木刀を構えて固まっていた大に対して、芹沢がボクシングの構えをする。
その背後から、急に立ち上がり木刀を拾い上げたコウが襲い掛かった。
次いで、同じく原田がコウの動きに合わせて動き、芹沢の左手後方から攻撃を仕掛ける。
それをまるで後ろに目でも付いているようにしゃがんで交わし、コウと原田の背後に回った。
すぐ様、芹沢がコウと原田の頭を掴み、勢いよく二人の頭をぶつけ合わせる。
コウと原田の苦痛の叫びが部屋に響いて、思わず耳を塞ぎたくなった。
「コウ!原田!」
大がすぐに芹沢に向かって木刀を振りかざした。
しかし、その動きに私から見てもがむしゃら感が窺えて、いとも簡単に木刀を躱されてしまう。
そして、その後に芹沢が大のお腹に蹴りを入れた。
大がその場に崩れ落ちる。
「大!!」
堪らず叫んだ。
芹沢の周りに大とコウと原田がなすすべもなく倒れている。
「おいおい…もう終わりか?もっと俺を楽しませてくれよ?それとも向こうにいる可愛らしい女にお願いしようか?」
芹沢がそう言って私を指差した。
その視線を真っ直ぐに受け止める。
「…面白いじゃない。私は構わないわよ」
不思議と怖さはなかった。
もしかしたら、芹沢と戦ってみたいという気持ちが心のどこかであったのかもしれない。
そして、近くに落ちている木刀に目をやる。
今なら身体はほぼ動く。
多少のダメージは残っているけれど、実力を発揮するには充分だ。
芹沢に近づきながら木刀を拾い上げた。
「おいおい。本当にお前が相手するのかよ?冗談のつもりだったのによ…」
芹沢が苦笑しながら、仕方なさそうに木刀を拾う。




