そうでなくちゃ面白くねぇ
「…そうか。それなら仕方がねぇな…」
芹沢はそう言って口から煙草の煙の残りを吐き出した。
「芹沢…俺はアンタと揉めるつもりも歯向かうつもりもねぇ。それにこいつらは何の関係もない。…だから大人しく帰らせてはくれないか?」
原田が慎重にかつ穏やかに芹沢に提案をした。
「…原田ぁ。それはないぜ。こっちはチームの連中が大半やられているんだぜ?このまま、そうかと帰す訳には行かねぇだろ?」
芹沢が椅子の上でくるりと回転しながら言った。
「…せめて、こいつらだけでも帰らせてくれ!頼む!」
そう言って原田が芹沢に向かって深く頭を下げた。
その様子を大とコウがどうすることも出来ずに見ている。
勿論、私も…
「…駄目だ。俺が見た感じだと、そいつらも俺の可愛い部下をのしちまっているよな?そうだろ新見?」
芹沢が見下ろすように隣で苦痛の表情で地面に座り込んでいる新見に訊ねた。
「はい…情け無い限りですが」
「なら、そいつらも大いに関係あるぜ。黙って帰す訳にはいかないな。…そうだな。帰りたければ俺の相手をしてもらおうか?」
そう言って、芹沢がバーカウンターの椅子から立ち上がり、ゆっくりと三人の方へと歩いていく。
大とコウが木刀を構えた。
しかし、原田はまだ戦う気は無さそうだ。
「やめろ!こいつには手を出すな…こいつはヤバ過ぎる!」
芹沢を迎え討とうとする大とコウを原田が止める。
「何、言ってんだ原田?お前らしくないだろ?三人まとめてで構わないからかかって来いよ」
余裕の表情を浮かべて芹沢が三人に迫ってくる。
「…原田!やるしかねぇよ!三人なら勝てる筈だ!」
「この男が危険なのは分かる。…だが、状況的にやるしかないだろ。覚悟を決めろ原田」
大とコウの言葉に原田も諦めるように身構えた。
「そうだ…そうでなきゃ面白くねぇ!」
芹沢が歓喜の声を出す。
部屋に張り詰めた緊張感が走る。
先手必勝とばかりに大が声を上げながら芹沢に木刀で襲いかかった。
それにコウと原田も動いたのが分かったが、すぐにピタリと止まる。
大の攻撃が芹沢の左手で軽々と止められたのだ。
そして、芹沢が木刀を引っ張り、大きく大の体勢を崩す。
そこに容赦なく芹沢の蹴りが大の横腹を襲う。
「大!?」
それを見ていた私は思わず立ち上がって声を上げた。
大は吹き飛ばされてすぐ横にあった壁に激突する。
「甘いなぁ…手ぶらの相手に対しての躊躇が見られたぜ?それでは俺は倒せない」
芹沢が木刀を倒れる大から奪い取り、自分の武器にした。
そして、コウと原田に対して木刀を構える。
その立ち姿に芹沢も剣道の経験者だと分かった。
…だけど、何か違和感がある。
その違和感に気づく前に芹沢が動いた。
芹沢の攻撃をコウが一歩前に出て防いだ。
その隙に原田が芹沢に攻撃を仕掛けようと動く。
しかし、芹沢が左手だけで木刀を持ってコウを木刀ごと押し退け、空いた右手で原田が攻撃をする前に原田の顔面にストレートパンチを打ち込んだ。




