原田②
「…ごめん。ちょっと用事が出来た。先に教室に帰ってて」
二人にそう告げて、廊下を反対方向へと走り出した。
「沖田さん!?」
背後から藤堂さんの声が聞こえたが、今は振り返っている余裕はない。
階段を下りて、昇降口で下履に履き替える。
そして、さっき廊下から見えた場所へと走って向かう。
その場所である北校舎の裏手側に辿り着いた時、一人の男子が男子生徒の胸ぐらを掴み、今にも殴りかかろうとしていた。
「やめなさい!」
その男子に向かって叫んだ。
「…あん?」
私に気が付いた男子は胸ぐらを掴んだまま、私を睨みつける。
金髪で耳にはピアス。
偏見は嫌いだけれど、いかにも不良ですといった印象だ。
状況を確認すると、その不良生徒に胸ぐらを掴まれた男子生徒とその傍で尻もちをついている男子生徒がいた。
男子生徒達を見る限り、まだ殴られたような形跡はない。
「一体、何やってるの?私には一方的に暴力を振おうとしているようにしか見えないけど」
その不良に近づきながら言った。
「…何だお前?関係ないだろ、どっか行けって」
不良が男子生徒の胸ぐらを掴む手に力を入れた。
「関係ないけど、見た以上はほっとけない」
私は力強く不良の目を見る。
「止めときな。俺は女だからって容赦しないぜ」
「…容赦したら、アンタが危ないわよ」
話しながら不良の射程圏内に足を踏み入れる。
それを見た不良が舌打ちをしてから、乱暴に男子生徒を離した。
「女が出しゃばるんじゃねぇよ!」
不良がそう言って、私に右手を伸ばした。
その動きに本気さが全く感じられない。
おそらく私の腕でも掴んで怖がらせようと思ったのだろう。
女だからって舐められた…!
私は怒りのあまり、その手を避けて不良の左側に回り込み、胴の部分に竹刀を打ち込んだ。
…が、あくまでそれはイメージであって、実際に竹刀を持っていない今は拳になる。
「…うぐっ!」
不良が変な声を漏らして、お腹を押さえながら膝から崩れ落ちる。
…しまった…やり過ぎた。
と後悔している間に不良に絡まれていた男子生徒達がそそくさと逃げていく。
「ち、ちょっと!」
私は思わず声をあげた。
女の私を置き去りにして先に逃げるの…!?
情けない男子生徒達の後ろ姿を見ながら、深々とため息を吐いた。
すると、逃げていく男子生徒達がそれぞれ捕まっていく。
「大!コウ!」
「おいおい、女子に助けられておいて、逃げるか普通」
「大から、ちえが走って行くのが見えたと聞いて慌てて来てみれば案の定、厄介ごとに足を突っ込んでいたか…」
大とコウが男子生徒をそれぞれ捕まえて私の方に歩み寄る。
「…離せよ!」
コウが捕まえている男子生徒が逃げようともがく。
「…確か1-Cの野口だったっか?そっちは平間だな?やましいことがなければ、むしろ被害者なんだから逃げる必要なんてない筈だが?」
コウが野口と平間という生徒に冷静に問い掛けた。
二人ともコウの指摘が図星なのか目を逸らす。
「ちえ!後ろ!」
大の言葉に慌てて後ろを振り返る。
すると、不良がゆっくりとお腹を押さえながら立ち上がっていた。
「…てめぇ…よくもやりやがったな…!」
多少、ふらつきながらも、私に近寄ってくる。




