原田①
昼休みになり、婆ちゃんが作って鞄の中に入れてくれていた弁当を取り出して机の上に置いた。
そして、藤堂さんと山南さんが私の席に弁当を持って集まってくる。
高校生活が始まってから、昼休みはずっとこのスタイルだ。
中学の時はいつも周りは男子ばかりで、出来るだけ早く弁当を食べ終えて外で遊んでいた。
なので、女子的なこのスタイルに未だ私は慣れていない。
藤堂さんと山南さんの話は今時で、剣道しかやってこなかった私にはついていけない話ばかりだ。
だけど、居心地は良かった。
彼女達が繰り出す話は新鮮で決して退屈ではない。
知らない話にはただひたすら耳を傾けているけど、それを二人も気遣ってくれているので比較的、話に溶け込めやすいのだ。
大とコウといる時間は勿論楽だけど、藤堂さんと山南さんと過ごす時間もまだ浅いとはいえ、既に私にとってかけがえのないものへとなりつつある。
そんな時、女子の私も悪くないと思えるんだ。
などと思いふけっていると、また今朝の話になった。
「本当の本当に違うんだよね?」
藤堂さんが疑わしき目で私をじろりと見る。
「…だから、本当の本当にそうだってば」
苦笑いで否定する。
「…なら、喜ぶ人が多いと思うよ」
山南さんが謙虚な声で言った。
「そりゃそうよ。沖田さんと土方くんが付き合っているんじゃないかって思っている女子は多い筈だからねっ」
藤堂さんの言葉に山南さんがゆっくりと首を振る。
「違うよ。私が言ってるのは、そう勘違いしている男子の方」
山南さんの話が理解出来なかった。
男子?
「あっ、そっちか。うんうん、そりゃ喜ぶでしょうね。相手があの土方くんなら敵わないもの」
藤堂さんが深々と頷く。
「…ちょっと待ってよ。一体、何の話をしているの?」
そう訊くと、藤堂さんと山南さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顏で互いの顏を見合わせた。
「…まさか自覚がないの?」
藤堂さんが嘘でしょと言わんばかりに私に訊く。
「…沖田さんって気軽に男子と話しているでしょ?あれって、結構勘違いしてしまう男子がいるのよ。このクラスの男子は特に…」
他のクラスメイトに聞こえないように周りを見ながら、小さめの声で山南さんが言う。
「…しかし、そのあとで土方くんや近藤くんとやたら仲良くしている姿を見せつけられる。そりゃあ、さぞかし打ちひしがれるでしょうね」
藤堂さんがしみじみと語る。
なんじゃそりゃ…?
「…いやいや、ガサツで男っぽい私がそんな訳ないって」
そう言って首を振りながら、弁当を食べ終えたにも関わらず、右手に箸を持って意味もなく動かす。
「沖田さんは自分が思っている以上に魅力的なのよ。女の私でもそう思うもの」
山南さんが笑顔でそう言うけど、私には理解が出来ない。
「…やっぱり類は友を呼ぶのね。だって幼馴染み三人とも人気ものだもん」
藤堂さんが羨ましそうにため息を吐いた。
全く二人の言葉に実感が湧かないまま、ご飯を食べ終えお弁当を仕舞うと、私達は仲良くトイレへ行くため教室を出る。
そして、その帰りに廊下の窓からとある光景が目に飛び込んできた。
「…どうかした沖田さん?」
私の様子の変化に気が付いた山南さんが私にそう訊ねた。




