大と原田
「…馬鹿野郎。お前は女の子だぞ…顔を傷つけられて大丈夫なわけないだろ…」
大が歯を食いしばった。
怒りに満ちた表情だ。
こんな顔をした大を見るのは初めてなくらいに…
「ちえはここで待っていろ。すぐに終わらせてくるから…」
私の頭をポンっと軽く叩いて大が笑顔を見せる。
それに黙って頷く。
私が頷いた直後、すぐに大がコウと原田の元に戻っていった。
それを見届けてから、ゆっくりと立ち上がって傷付いて倒れている谷くんの隣へとしゃがみ込んだ。
「谷くん、大丈夫?」
「…うん、なんとかね」
谷くんが小さく笑って答えたのでホッとする。
そして、大とコウと原田の方へと視線を送った。
二十人はいた新見の手下も、もう新見を含めて立っているのは四人になっている。
新見はコウと交戦中だ。
さっきから少し新見を見ていたが、手下とはまるで動きが違う。
そして、その動きは剣道をやっていた者の動きだった。
その証拠に新見は武器に木刀を選んでいる。
鉄パイプという選択肢もある中で木刀を選んだ新見はやはり剣道経験者だ。
威力は鉄パイプの方が段違いだが、扱いやつさがまるで違う。
新見がコウに次々と打ち込んでいく。
コウは全て捌き切るも、防御するのが精一杯だ。
…あのコウが息を切らして苦戦している。
新見はおそらく木刀を使い慣れている様子だった。
それなら、普段は竹刀のコウにとって木刀は扱いづらく、非常に木刀同士では部が悪い。
…まあ、それだけ新見の剣道の実力も高いのだろう。
一方で原田と大が相手を一人ずつ倒して、二十人はいた半グレ集団もあと一人となった。
「…ったく、余計なことしやがって…そのまま来なくても俺一人で何とかなったのによ」
原田が大と肩を合わせて言った。
「…何、言ってんだよ。めちゃくちゃピンチだったじゃねぇか?というか一人で抱え込みやがって、お前が一人で解決出来なきゃ、ちえまで危ないんだよ。少しは俺らに相談しろよな」
大が原田に文句を言う。
「…悪かったよ。…俺はともかく、お前らは厄介ごとに巻き込みたくなかったんだ。喧嘩沙汰になれば大会にも出れなくなる可能性があるし…」
原田が遠慮がちに謝っていた。
その声が聞こえてきて、相変わらず原田はいいやつだなと笑みが溢れた。
「…馬鹿野郎。ちえが巻き込まれた時点で俺らは後先考えねぇよ。昔にあいつは俺らが絶対に守ると誓ったんだから…」
大の言葉に耳を傾けていた時、残りの一人が鉄パイプを振り回しながら大と原田に勢いよく向かっていく。
大が冷静にその鉄パイプの動きを木刀で止めて、その隙に男の懐に入いった原田が拳を振り下ろす。
地面に叩きつけられた男はそのまま気を失った。
見事な連携プレーに、やっぱり男子はいいなと心中でヤキモチを妬く。
…でも、守られる立場もたまには悪くないかなと感じた。
残りの一人を倒した大と原田が少し離れたところで新見と戦っているコウに応戦しようと近づいていく。
「土方!そいつは俺がぶっ倒すからあとは任せろっ!」
原田がそう言って、コウの隣に立つ。
「いやいや、こいつは俺がやる!ちえを傷つけやがった代償は俺が払わせる」




