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とらいあぐる  作者: おきゆむ
高校一年 夏
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本気の太刀

「ちえ!?」


半グレ集団の溜まり場のような部屋に入って来た大が私を見て声を上げた。


二人を見た瞬間、自ずと安堵感に包まれる。


「誰だテメェら?」


私を掴もうとしていた平山がぴたりと動きを止めて、大とコウの方へと視線を移す。


よく見ると大とコウの手には木刀が握られている。


「招かれざる客には用はないお引き取り願おうか?」


倒れた原田のお腹に右足を置きながら、新見が言った。


その言葉に耳を傾ける様子もなく、二人は一歩一歩前へと足を進める。


「どうやら痛い目に遭わないと分からないようだな?」


新見がそう言うと、倒れた原田の周りに立っていた男たちがぞろぞろと大とコウの方へ威圧感を出しながら向かって行く。


「…お前ら…よくもちえを傷つけたな!容赦しねぇから覚悟しろよ!」


大がそう怒りの声を上げて、木刀を構えた。


「悪いが俺も同じく手加減は出来ない。そのつもりで来い」


コウが怒りに満ちた口調でチンピラたちを威嚇して、大と同じく木刀を構えた。


…ところで二人はあんな木刀をどこで手に入れたんだろう?


勿論、学校には竹刀しか置いていない。


そんな疑問を抱くも、今はそんなことを考えている場合ではないかと我にかえる。


その直後、大とコウの木刀が暴れ出す。


一人また一人と男たちが倒れていく。


大とコウに手加減なしで木刀で打ち込まれたのだ。


あの二人の本気の太刀だ…ひとたまりもないだろう。


「俺はそのパーカの男の相手をする。大はちえの前にいる赤毛の男を頼む」


コウが勢いよく向かって来た男に面と銅に連続で打ち込んで倒したあと、冷静な口調で大に言った。


「オッケー。じゃあ、ここは頼んだぜ」


大がコウにその場を任せて、こっちへと向かってくる。


「ふざけやがって…!」


平山がそう吠えて、スカジャンのポケットから折り畳みナイフを取り出した。


「大!?」


平山のナイフを目にして思わず叫ぶ。


「大丈夫だ。そんなもん出したところで、当たらなければどうってことねぇよ」


大が自信たっぷりにそれでいて真剣に答えた。


「あん?なら望み通りにぶっ殺してやるよ!」


平山が大にナイフで切り掛かった。


しかし、すぐにナイフを持っていた手に木刀が当たる。


ナイフはすぐさま地面に落下し、それをすぐに大が蹴って転がした。


平山がそれを目で追った瞬間、平山の頭上に大が振り下ろした木刀が命中する。


平山が勢いよく地面に倒れ落ちた。


完全に白目をむいている。


「大丈夫か?」


倒れた平山に視線を向けていると、大がそう言って私に声を掛けた。


「…うん、私は大丈夫。でも、谷くんと原田が…」


そう答えて谷くんに、そして原田に目を向ける。


するとさっきまで倒れていた筈の原田がすでに立ち上がっていて、周りにいた連中をコウと一緒に次々と倒していた。


「…原田は大丈夫そうだな」


その姿を見て大が苦笑した。


私も同じように笑って、相変わらずタフだなと感心する。


「助けに来てくれてありがと…もう、駄目かと思った」


安堵感からかつい涙目になってしまう。


「…相馬先輩にお前が走ってどこか行ったって聞いた時から嫌な予感がしたんだよ。原田のやつも急にいなくなるし…」


そう言いながら大が倒れている私の前にしゃがみ込む。


そして、少し腫れた私の頬に大が優しく触れた。


「…痛むか?」


「うん、少しね。でも、大したことないよ」


そう言って少し笑みを浮かべた。

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