今がチャンス
原田は新見を避けて、その怯んだ者のところへ飛ぶように蹴りを入れた。
原田に蹴られた男が後ろに倒れて、その後ろにいた者たちがそれに巻き込まれる。
その隙に原田が次々と男たちに攻撃を仕掛けた。
新見も原田にやられた者の煽りを受けて身動きが取れないでいる。
…今がチャンスだ。
谷くんが奪ったナイフを持って私の横まで来てくれる。
そして、足と手につけられていた結束バンドを切ってもらう。
私はすぐに飛ぶように起き上がった。
…しかし、スタンガンを浴びせられたことよりまだ身体が言うことを聞かない。
それに倒れた時、地面に打った痛みが身体中に走る。
思った以上にダメージが…
一瞬、よろめいたがなんとか堪える。
「…沖田!?」
原田が身動きが取れて自由になった私に気づいて叫んだ。
なんとか応戦しようと近くに落ちてある木刀を拾おうと少し屈んで手を伸ばす。
これがあれば私でも戦える…!
しかし、手を伸ばした木刀が誰かに蹴られて床を滑るように流れていく。
「残念。惜しかったな」
顔を上げると目の前に嘲笑う平山の顔があった。
そして、すぐに拳の裏で弾くように頬を殴られる。
一瞬、上体反らしたのでまともには食らわなかったものの、踏ん張り切れずに床へと倒れてしまう。
「沖田!」
倒れた状態で私に向かって叫ぶ原田が視界に入いる。
しかし、私に気を取られた原田が新見に顔面を回し蹴りされた。
「原田!?」
思わず叫んだ。
すると私の視界を塞ぐように平山が私の前に立ちはだかる。
なんとか立ち上がろうとする前に腹を思いっきり蹴られてしまう。
私は声ならない悲鳴をあげた。
コロコロとお腹を押さえて地面を転がる。
…原田を助けようとしたのに、却って原田の足を引っ張ってしまった。
何やってるんだ私…
悔しさと痛みで涙が溢れるのを必死に堪える。
下品に笑いながら平山が歩いて来るのが目を瞑っていても分かった。
…早く立たなきゃ…このままじゃ原田が…
そう自分の身体に言い聞かせるも、身体が言うことをきかない。
遠くで新見たちに殴られている原田の苦痛の声が耳に届く。
…誰か…誰か助けて!
私は心中で叫んだ。
誰か助けてと願ってはいたが、脳裏には確かに大とコウの姿が浮かんでいた。
その時、出入り口付近いた野口と平間の悲鳴が聞こえてくる。
痛みが和らいだ時、ゆっくりと瞳を開いてその方へと視線を向けると、野口と平間が倒れている後ろにさっきまで脳裏に思い浮かべていた人物たちが立っていた。
「大!コウ!」
私は思わず歓喜の声をあげた。




