目的は原田
「谷くん!」
「ほらな?大丈夫だっただろ?」
新見のいやらしさが籠もった声が上から聞こえてくる。
「…うっ…沖田さん?良かった…無事だったんだ…」
気がついた谷くんが私の方を見て言った。
「谷くん…ごめんね私のために…」
谷くんの姿が痛々しくて仕方がなかった。
「…僕の方こそごめん…巻き込んで…それに助けられなかった…原田くんに怒られるかな?」
谷くんが必死に苦笑いを浮かべた。
私は首を横に振って否定する。
「谷くんはそんなになってまで私を助けようとしてくれた…」
思わず涙ぐむ。
「感動の再会は済んだか?じゃあ、そろそろ楽しませてもらおうかな?」
平山がそう不敵な笑みを浮かべて私の方へと歩み寄ってくる。
私は懸命に手足の縛りを解こうと抗う。
「やめろ!こいつは大事なお客さんだ。手を出したら殺すぞ」
新見が鋭い視線を向けながら平山に怒る。
「…すみません」
平山が怯えた表情を見せた。
それにこの新見という男の恐ろしさが伝わってくる。
「…今回はあくまで目的は原田だ。芹沢さんにもそう伝えてある。余計なことをすると後で殺されるぞ…」
新見が芹沢という言葉を口にした瞬間、平山の表情が更に怯えを増していく。
「原田!?原田が目的ってどういうこと!?」
私は原田の名前に強く反応した。
「あいつをここに誘き寄せるって目的だよ。野口と平間から原田がお前たちと同じ高校に通っているって聞いていたからな…」
「原田を誘き寄せる…?」
「ああ、だからお前を攫ったんだよ。そっちの小太りだけでは少々あいつの怒りを引き出すには物足りなさそうだったからな」
新見の言葉に驚愕する。
私は初めから嵌められてたんだ…
原田を誘き寄せる餌として…
「原田に何の恨みがあるのよ!あいつは今、必死に剣道に打ち込んでいるの!邪魔しないで!」
私の言葉に新見が笑みを浮かべる。
「…お前は知らないんだよ。中学の頃のあいつをな…」
「中学の頃の原田…?」
私がそう訊くと新見は懐かしそうに語り出した。
「ああ…あの頃のあいつは凄かった。そりゃあもう誰も手がつけられないほどに…相手が大人だろうがお構いなしに薙ぎ倒していやがったさ」
新見の言葉に耳を疑った。
…今の原田からは想像もつかない。
「…それは中学の時の話でしょ?今の原田は違う。アンタたちなんかとは全然違うんだからっ!」
新見が言う原田を否定するように私は叫んだ。
すると新見の顔が豹変する。
新見が近くにあった丸いテーブルを思いっきり蹴っ飛ばした。
テーブルが倒れて地面に倒れる衝撃音が部屋中に響き渡る。
そして、新見が苛立ちを込めて口を開いた。
「…ああ、全然違うな。何だあれは?完全に腑抜けてしまいやがった…」
新見は倒れたテーブルを更に上から踏みつけた。
再び、激しい音が響き渡る。
「昔の原田はもっとギラギラしていた。芹沢さんがチーム鴨に入らねぇかと誘ったのを断りやがった時も、アイツなら仕方ねぇかと割り切った。それはアイツが一匹狼のような牙を剥き出した存在だから許せたんだ…なのに何だ今のアイツは!」




