谷くんを追って①
午後からの授業が終わり、教室の窓から相変わらず降り続けている雨を疎ましく睨みつける。
…まあ、朝に誠子が言った通り、他の運動部みたいに剣道部は雨の影響を受ける訳では無いのだけれど、要は気分の問題なのだ。
雨だとなんだか気分が高まらない…
…などと贅沢を言っている程、猶予がある訳でもなく、そんなことは関係なく練習に打ち込まなければいけないと心中で自分を叱咤する。
雨でも試合は変わらずに行われるのだから…
私は気合を入れ直して、部活に向かおうと席を立つ。
その間際、渚が少し慌てた様子で私の席までやって来た。
「ねえ!?E組の谷くんって確か剣道部だったよね?」
「えっ?うん、そうだよ」
渚の問いに一瞬戸惑いを感じるも、落ち着いて答える。
「…やっぱりそうだよね。何かさっき廊下でC組の男子二人に連れられて歩いて行ったから少し心配になってさ…」
渚がそう言って表情を曇らせた。
「それほんと!?どこ?まだ近くにいる?」
そう驚き、渚に顔をグッと近づけた。
「…多分、見かけたのは数分前だからまだ学校内にはいるんじゃないかな?」
渚は少しのけぞりながらそう答えた。
まだ、近くにいるかもしれない…!
私は慌てて廊下に出て、窓から外を見た。
すると渚の言う通り、傘をささずに歩く谷くんを挟むように歩いている二人の男子が見える。
しかし、二人共傘をさしているため、誰かは分からない。
…でも、C組の男子なら大体、検討はつく。
私が原田に勘違いをしたあの時にいたC組の野口と平間だ。
…まあ、二人共印象が薄かったので、どっちが野口でどっちが平間かまでは覚えていない。
また、谷くんに言いがかりをつけてお金を巻きあげる気だろうか…?
…許せない!
急いで廊下を走り出す。
教室に荷物を置きっ放しにしてきてしまったけれど、荷物なんか持っていたら早く走れずに谷くんたちを見失うかもしれないので、とりあえず今は追いかけることにした。
階段を駆け下りて、昇降口で下履きに履き変え、傘立てから自分の傘を取って勢いよく開き、外へと駆け出していく。
「沖田さん…?そんなに慌ててどこ行くの?」
校舎を出てすぐに渡り廊下を歩く相馬先輩に呼び止められる。
「相馬先輩!?ちょっと急用が出来たので、部活行くの遅れます!」
「えっ!ちょっと…一体どうしたの!?何かあったの!?」
相馬先輩の声を背に受けながら、私は谷くんたちを追いかけて校門へと向かう。




