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とらいあぐる  作者: おきゆむ
高校一年 夏
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56/82

最高の練習相手

「さあて、後半は誰が私の相手をしてくれるのかな?」


そう言って男子部員を物色し始める。


「沖田さんなんだか顔が危ないわよ…」


隣にいた相馬先輩に苦笑いで忠告されたので、慌てて表情を気にする。


「沖田!俺が相手になるぜ!」


面をつけたままの原田が私の前までやって来て大声で立候補をする。


「こらっ!練習中に何処へ行くんだ原田!戻って来い!」


それに気づいた山崎先輩が怒鳴り声を上げたので、原田が慌てて戻っていく。


…インターハイ個人戦の予選まであと一週間を切った。


その翌週は関東大会団体の本戦も控えているので、流石にピリピリとしている。


月曜日の今日の練習が終われば、あと四日しか猶予がないのだから…


前日の土曜日は身体を休めるため、一日休養日になっている。


でも、私はおそらくその日も自主練をしてしまうだろう。


そうしないと気持ちが落ち着かないのだ。


…しかし、この様子だと今日は男子とは練習が出来ないかと肩を落とす。


「あらあら、インターハイを目前に控えているというのに随分とのんびりしていますのね」


突然、体育館の入り口の方から聞き覚えのある口調が聞こえてくる。


すると、入り口に剣道着に身を纏った伊東さんの姿があった。


「伊東さん!?」


私が驚きの声をあげると、彼女は私の反応にも気にした様子を見せずに堂々と私の元まで歩いてきた。


「暇だから、あなたの練習に付き合ってあげても良いですわよ…ただし、手加減はしませんわ」


若干、恥ずかしそうに伊東さんが話す。


その言葉に驚き、もしやとすぐに男子のかたまりの中にいるコウの方に視線を向けた。


すると、遠目でもコウが思った通りの反応を示したので、やっぱりコウの仕業かと理解する。


…だけど、今の私にはとても有り難いことだ。


「ありがと!うん、絶対に手加減なんかしないで全力でお願いね!」


私は嬉しい声をあげた。


「…言ってくれますわね。後悔しても知りませんわよ?」


伊東さんがそう言って、早速準備を始めた。


その姿に私のアドレナリンが高まっていく。


その日の練習は私にとって最高の練習になった。


なにせ、最高の練習相手を備えたのだから当たり前だ。

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