原田とデート③
電車を降りて改札を出るとすぐに遊園地が顔を出す。
それに思わずテンションが上がってしまう。
「ほらほら見てあのジェットコースター!すっごく楽しそう!」
原田の裾を引っ張って声を上げた。
「…マジか…あれは流石に怖くないか?」
ジェットコースターから聞こえてくる絶叫を耳にした原田の顔が青ざめる。
「…何言ってるのよ?男でしょ?あんなの怖いなんてだらしない…」
ため息を漏らしながら野次る。
「…べ、別に怖かねぇよ。客観的にそう思っただけで、実際乗ったらあんなの屁でもねぇぜ」
原田は腕を組んで言って威勢を張る。
しかし、数十分後その威勢は見る影もなかった。
「…大丈夫?」
ジェットコースターのすぐ横にあるベンチに原田がぐったりと座り、その横に腰掛けて心配する。
「…大丈夫、大丈夫。…ちょっとびびっただけだって」
「ほんとに?」
「ほんとだほんと。さて、次は何乗るよ?沖田の乗りたいもの何でも乗るぜ!」
そう言って、原田が勢いよくベンチから立ち上がる。
「そう?ならアレかな?」
私もベンチから立ち上がって、少し遠くにある急降下するアトラクションを指差した。
その時、原田の顔が一瞬青ざめたように見えたのは後々気のせいではなかったことを知る。
◯
「…何で言わなかったのよ?てか絶叫マシンが苦手なのになんで遊園地誘うのよ馬鹿」
パラソルの下にあるテーブルに原田と座って文句を言った。
あのあと、散々スリルがありそうな好きなアトラクションを乗って、気がつくと隣で原田がぐったりとしていたのだ。
問いただすと原田は昔から絶叫マシンが苦手だと言うではないか…
仕方なく近くフードコートのテーブルの椅子に座っている。
私的にはまだまだこれからだったのに…
心中でぼやきながらソフトクリームをかぶりつく。
「…いや、なんとなく沖田は遊園地が好きそうだと思ってよ」
金髪頭が情けなくテーブルにうなだれている。
「…アンタがこんなんだったら楽しめないでしょ?」
「面目ねぇ…」
テーブルの上の原田が弱々しい声を出す。
「まあ、でももう充分楽しいけどさ…連れて来てくれてありがと」
「そうか…良かった…」
相変わらず顔をテーブルにうつ伏せている原田に仕方ないわねと笑みが溢れた。
「少し休んだら次はアンタのリクエストに応えるわよ。乗りたいものある?」
私の問い掛けに原田が精一杯顔を上げて、こっちを見た。
「ある。観覧車」
◯
「わぁ!見て見て凄い建物がちっちゃく見える!新撰高校ってあっちの方かな?」
「おいおい。乗りたいって言った俺より沖田の方がテンション上がってないか?」
観覧車の中の向かいの席に座る原田が苦笑する。
「だって、観覧車なんて久しぶりだからさぁ。ついついテンションが上がってしまうのよ」
私がソフトクリームを食べ終えたタイミングで私たちは観覧車に乗った。
昔、お母さんと一緒に乗った記憶がすぐに蘇ってくる。
…だからテンションを上げずにはいられないのだ。
「…なあ?何で今日は俺とデートしてくれたんだ?」
原田が急にあらたまった様子で切り出した。
「何でって、それはアンタに一本取られたからでしょうが…」
そう言って口を尖らせる。
「…ちげぇよ。そうじゃなくて、何でちゃんとデートしてくれる気になったんだってことだよ…断ろうと思えば断れただろ?」
原田が外を見ながら訊く。
「約束だし…それに原田…嬉しそうだったから…」
私も恥ずかしくなり、外の景色に視線を向けながら答える。
「…そうか。ありがとな」
原田が小さく笑った。
「どういたしまして…」
そのまま外の景色を見ながら返す。
「俺はお前のことが好きだ。…でも、今すぐ答えが欲しい訳じゃねえんだ。だから、今は同じ部活仲間としてお前と接していたい。…駄目か?」
原田が私に視線を戻して、真顔で話す。
私は横目でそれを聞いた。




