原田とデート②
玄関のドアを開けて外に出ると、いつもと随分違う気がして心が重く感じた。
おそらく自分の格好が妙に落ち着かないのだろう。
家を出た瞬間、辺りをキョロキョロと見回した。
知り合いには極力見られたくない…
特にあの二人には…
私は足早に駅へと向かっていく。
普段、学校でスカートを履いているにも関わらず、足元のスースー感に堪らなく違和感を抱いてしまう。
ふと、道に停めてある車の窓ガラスに映る自分の姿が目に飛び込んできて立ち止まった。
思わず、恥ずかしさが込み上げてきて、すぐに顔が熱くなる。
…今すぐ家に帰りたい。
このまま、逃げてしまおうか…?
その時、嬉しそうにしていた原田の顔が頭に浮かんできた。
…行くわよ…行けばいいんでしょ!
そう心中で叫んで再び歩みを進めた。
駅に着くと携帯電話を持っていない私は腕時計で時間を確認する。
10時半。
約束の時間よりまだ30分も早い。
「…流石に早く来すぎたかな?」
駅の前で独り言を溢した矢先、近づいてくる足音が聞こえてくる。
「…沖田?」
足音の方へと視線を送るとこちらに驚いた表情を向けた原田の姿があった。
明らかに私の格好に対しての反応だ。
そう思うと急速に恥ずかしさが込み上げくる。
「な、何よその表情は…いつもと違うから変だって思ってるでしょ?」
「…い、いや。確かに驚いたけどよぉ…その服装、すげぇ可愛いと思う…に、似合ってるぜ」
原田が顔を赤らめて言った。
その言葉にこっちまで顔が赤くなる。
「…あ、ありがと」
一瞬、恥ずかしさから怒ろうとしてしまうのを堪え、素直に礼を言う。
「…じゃあ、行こうか?」
私はこくりと頷き、原田に促されて駅の切符売り場に向かう。
「…ところでどこ行くの?」
「俺に任せるって言うから、遊園地に行こうかと思うんだけど…いいか?」
原田の言葉に一瞬、懐かしい絵が脳裏に浮かぶ。
…遊園地。
前に行ったのは母が倒れる前だった。
達兄と和兄と私とお母さん…
楽しそうに遊園地ではしゃぐ姿が今でも鮮明に思い出せる。
「いいよ」
私は笑顔でそう答えた。
「よしっ!そうと決まれば早く行こうぜ!」
原田が私の笑顔に応えるように満面の笑みでテンションを上げた。
「…そんなに慌てなくても、遊園地は逃げたりしないわよ」
思わずクスッと笑う。
…久しぶりの遊園地。
あれ以来、行ってなかったことに今更になって気付く。
…別に避けていた訳ではない。
ただ、なんとなく機会がなかっただけ…
あの頃の思い出に上書きするようで、一瞬は躊躇ったけれど、すぐに構わないと思えた。
…ううん、違う。
きっと、行きたくなったのだと思う。
私は原田に急かされながら、遊園地がある駅へと向かって電車に乗った。
道中はたわいない話で盛り上がる。
ふと窓に映った見慣れない格好の私と原田を見た時、これがデートだったことを思い出して少し顔が赤くなった。




