原田とデート①
そして、憂鬱な日曜日がやってきた。
今日は部活が休みなこともあり、いつもなら遅くまでぐーすかと寝ているのだけど、合わせていた目覚まし時計のアラームで目を覚ます。
厳密にはアラームを止めただ。
目はとっくに覚めていた。
昨日、寝る時はそれなりにすぐに眠りにつけたが、今日のことが夢に出てきて夜中に目が覚めてからは一睡も出来ていない。
…そもそも、昨日の事件によって私の心を大きく掻き乱されてしまったんだ。
…あの馬鹿和兄めっ!
私は恨めしそうに部屋に吊るされているいかにも女の子という可愛らしいピンク色の花柄のワンピースを睨みつけた。
昨日、夜になって着て行く服装を選ぼうと部屋に入ったら服が全くなくなっていて、在ろうことかこのワンピースが置いてあるではないか…
私が悲鳴をあげると、和兄が部屋にきて「明日デートだろ?お前が少しでも女の子に見える服装を用意してやったぜ」とにやにやしながら私に告げやがったのだ。
私は即座に「こんなの着ていかないから!私の服を返せ!」と和兄に吠えたが、和兄は「いいのかなぁ?」と嫌な予感がする笑みを浮かべた。
「何よ?」
私は恐る恐る和兄に訊ねた。
「その服は達兄がちえに何か女の子らしい服でも買ってやってくれと頼まれた時に渡されたお金で買ったんだぜ?それを着ないということは達兄の思いを踏み躙ることになるなぁ?」
和兄が私を挑発…いや脅してきた。
…結局、達兄の名前を出されて何も言えなくなった私は仕方なくこのワンピースを着て行くしか選択肢はなくなったのだ。
…というか、あいつはどこから今日のことを知ったんだ?
どこか腑に落ちない表情で私は達兄がくれたお金で買ったというワンピースに着替えた。
着替えた途端、部屋のドアが勢いよく開き、婆ちゃんが入ってくる。
「な、何!?」
「折角の服にそんなボサボサの髪じゃ勿体ないだろう?セットしてあげるから来なさい」
半ば無理矢理に婆ちゃんに鏡の前に連れて行かれた。
そして、されるがままに私はまるで人形のようにしっかりと髪を整えられたのだ。
「ほぅ。馬子にも衣装じゃな。まるで女の子に見えるぞ」
「爺ちゃん…私は前から女の子だってば…」
婆ちゃんに居間へ連れてこられて、何やらお披露目会のようになってしまう。
「うんうん。髪が整って随分と良くなった。ちゃんとお母さんにも見せてあげなさい」
婆ちゃんにそう促されて、私は仏壇の前に座ってお母さんに朝の挨拶を済ませる。
「達兄に写真撮って送るから、お前なりの最高の笑顔をこっちに向けろ」
憎たらしい和兄の命令も達兄の名前を出されたら、逆らう訳にはいかず、仕方なしに笑顔を作る。
「…お前の最高の笑顔がこれか?デート相手は嘸かし哀れでならないな…」
和兄が呆れたように言った途端、私は思いっきり座布団を和兄目掛けて投げた。
それがクリティカルヒットをしたことを見届けて「もういいでしょ?そろそろ出掛けてくる」と小さな手提げバッグを持って玄関口に向かう。
このバッグも和兄が用意したものだ。




