一本取れたらデート②
それから何回、原田に打ち込んだだろう?
原田に攻撃なんてさせる隙を一切与えなかった。
しかし、それが私のスタミナを大いに消耗させたのだ。
私たちは休憩もせずにひたすら続けていた。
…駄目だ。
原田が倒れるのは期待出来ない…
なんなのよ…こいつのスタミナは底なしなの?
…あと、どれくらい?
練習時間が終わるのを待つしかない。
山崎先輩を一瞥した。
しかし、まだその気配はない。
その隙に原田が勢いよく打ち込んできた。
私は紙一重のところでそれを交わす。
徐々に原田の攻撃が増えている。
しかも、その攻撃には鋭さがあった。
…普通なら、バテてきて衰える筈なのに、原田はやればやるほど元気になっていく。
前に原田の入部は男子剣道部にとってプラスだと言ったけれど、今は素直に喜べない。
…絶対に一本も取らせない!
最早、デートなんてどうでも良かった。
これは、私が男子に負けたくないという意地だ。
しかし、不意に左脚が言うことを聞かず、思った動きが出来なかった。
それを原田は見逃さずに、今までにないような鋭さで私の胴に打ち込んでくる。
反応は出来たけれど、身体が動かない…
不覚にも胴に強い衝撃を受けてしまう。
「どうだ!今のは一本だろっ!?」
原田が慌てて面を取り、叫んだ。
私は悔しさのあまり、その場に固まってしまう。
原田が私の元へ駆け寄ってきて、再度訊いてくる。
私は面をつけたまま、こくりと頷いた。
負けは負けだ…仕方ない。
「やったぁ!約束は約束だかな!守ってもらうぞっ!」
原田が周囲を気にせずに大声を出して喜んだ。
「五月蝿いわねっ!ちょっと静かにしてよ!…ち、ちゃんと守るわよ。だから、静かにしなさい!」
そう言って、騒ぐ原田の口を押さえた。
思った以上に飛ばし過ぎた…原田がすぐに倒れると踏んでいた。
敗因は原田を甘くみていたことだろう…
…男子と女子の差。
純粋に悔しかった…
…今はそれよりも原田の約束を果たさなければならない現実が押し寄せてくる。
…原田とデート…最悪だ。
喜ぶ原田の横で、私は頭を…面を抱えた。




