一本取れたらデート①
暦が5月を刻んだ日、私はいつものように体育館で練習に勤しんでいた。
そして、後半の男子との練習時間になり、私は獲物を探すように男子部員に目を向ける。
「俺とやろうぜ」
目線の先とは違う方から声が聞こえた。
声の方に目を向けると、そこには袴姿の原田が意気揚々と立っている。
どうやら部活をちゃんと続けていくそうで、袴を購入したそうだ。
勿論、谷くんも。
「えー」
私は露骨に嫌な顔をした。
「そろそろ、いいだろ?一回くらい手合わせしてくれよ?」
…確かに原田は真面目に練習している。
そこにはもう不良の面影はない…いや、金髪は変わらずだから、そうでもないかな…
「…分かった。一回だけだからね?というか、すぐに根を上げないでよ?」
仏頂面で答える。
「本当か!?よしっ!大丈夫、根なんて上げないぜっ!」
原田が思わずガッツポーズをする。
…こっちまで恥ずかしいからやめろ。
早速、面をつけて、原田も座って同じく面をつけた。
すぐに手合わせが始まる。
次々と容赦なく原田に打ち込んでいく。
面、胴、小手と様々に…
五分もしないうちに、原田が息を切らして膝をついた。
「ちょっと、根を上げないんじゃなかったの?」
「…あ、上げてねぇよ!これからだってのっ!」
私は小さくため息を漏らした。
「威勢だけはいいんだから…そんなんじゃ私に一生一本なんて打ち込めないわよ」
「…一生は言い過ぎだろ?そこまで言うんだったら、一回でも俺が一本が取れたら俺とデートしてくれよ?」
「はぁ!?」
原田の突然のふざけた申し出を聞いて思わず声を上げた。
「…何だよ。お前だって口だけじゃねぇか?俺には一生一本を打たれないんだろ?」
原田の挑発にカチンとくる。
「…いいわよ。もし、練習が終わる時間までにアンタが一本でも私から取れたら、デートでもなんでもしてあげるわよ…」
「言ったな。約束だからな!ぜってぇ、一本取ってやる!」
原田が気合いを入れて立ち上がる。
私も精神を統一し、気合いを入れた。
取れるものなら、取ってみなさいよ…!
それから、すぐに手合わせを再開し、私は一切の手加減をせずに原田に挑んだ。
練習時間が終わるまでに、きっと原田の奴は持たないだろうというくらいに…
しかし、原田は倒れても倒れても立ち上がってくる。
「…ちょっと…なんてタフなのよ」
思わず、本音を口に出す。
流石に飛ばし過ぎて、少し息切れがしてきた。
「…へへ。まだまだ、これからだぜ」
原田の台詞に少したじろいでしまう。
…少し、原田を甘くみていた。
でも、男女の差がここで出てしまうなんて絶対に嫌だ。
竹刀を力強く握り返した。




