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とらいあぐる  作者: おきゆむ
高校一年 春
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40/77

心配か?

私が引き起こした騒ぎによって、いつもより帰宅する時間が遅くなった。


辺りが薄暗くなったこともあり、大は斎藤さんを家まで送ってあげるため、横にはコウしかいない。


「ちゃんと送ってあげなさいよっ。あっ、大が少しでも変なことをしたら私に言ってね。明日、私がぶん殴ってあげるから」


校門で大と斎藤に向けて言った台詞を思い出す。


「…心配か?」


「えっ…?」


隣を並んで歩くコウが訊いてきた。


「大と斎藤さんだよ」


「…ああ。うん、心配!大が斎藤さんに変なことをしないかねっ」


私はうんうんと頷く。


「…いや、俺が言った心配はそうじゃないよ。大と斎藤の仲が心配かって意味だ」


コウの言葉に思わず足が止まる。


だけど、すぐに歩みを進めた。


「何で私が?むしろ上手くいって欲しいわよ。大切な幼馴染の恋が成就するんだよ?そういう意味では上手くいくか心配よね」


「…そうか。まあ、恋が成就するかは、あくまでそこに恋心があればの話だけどな…」


「へっ…?」


「…いや、いい。変なことを訊いて悪かったな。ちえを困らせるつもりはなかったんだ…」


コウはそう言って、少しだけ私から顔を背けた。


「…コウはどうなの?」


私は伊東さんの言葉を思い出した。


「ん?どうとは?」


「伊東さん。あの人、コウのことが好きみたいだよ…」


少し遠慮気味に口にする。


「…知ってるよ」


コウが即答する。


「どうするの?気持ちに応えてあげないの?」


続けて質問する。


今度はなかなか返事がなく、しばらく私たちの足音が辺りに響く。


「…ちえは俺が伊東さんの気持ちに応えても平気なのか?」


ゆっくりとコウが口にした。


それに、私もすぐに返事をせずに溜める。


しばらくして、答えようと口を開く。


「…コウが良いんだったら応援する。だって、幼馴染だもの」


私の答えをコウは真っ直ぐ前を見ながら聞いていた。


「…そっかぁ、幼馴染だもんな」


一呼吸置いてからコウが笑みを浮かべて言った。


「…うん。だから、大が斎藤さんを好きなら私は全力で応援するよ」


私も笑みを浮かべてコウに言った。


ただし、目は合わせずに…


「…まあ、今のところは伊東さんの気持ちに応えるつもりはないさ。理由はちえと一緒だ。今の俺は剣道のことしか頭にないからな」


「…そうだよね。変なこと言ってごめん。大もコウも関東大会の個人戦と本戦が控えてるもんね」


私の言葉にコウが深いため息をついた。


「…何を言ってるんだ。本戦の前に早くもインターハイの個人予選が控えてるだろう?ちえものんびり構えている暇はないぞ」


「分かってますとも。六月なんてすぐだもんね」


…そうだ。


六月入ればすぐにインターハイの個人戦の予選だ。


そのあとは関東大会の本戦で、すぐにインターハイの団体戦が控えている。


インターハイは関東大会と違って、初めから個人戦に参加出来るから、関東大会みたいなことはない。


グッと右手に力が入る。


「その様子だと心配はなさそうだな。正直、ちえの言う通り、今は恋なんて言っている暇はない。きっと、大もな」


コウの言う通りだ。


そのことに随分と安堵してしまう。


「さて、明日はちゃんと練習するぞぉ」


私の意気込みに、思わず隣を歩くコウが笑い出す。

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