幼馴染③
そう心中で毒ついた。
大が支度を終えると、幸子さんに見送られ、私達は学校へと急いだ。
早歩きのため、竹刀が後ろで左右に揺れた。
三人とも同じ竹刀袋を背負っている。
中学生に上がる前に私達三人にお揃いの竹刀袋を達兄がプレゼントしてくれたのた。
私は涙して喜んだのを覚えている。
大もコウも兄弟がいない。
だから、二人は達兄のことを本当の兄のように思っている。
あと、憧れの存在でもあった。
達兄は高三の時に全国高等学校剣道大会で優勝を果たしているからだ。
剣道を嗜む二人にとっては尊敬に値するのだと思う。
勿論、私もそうだ。
達兄は私の自慢の兄であると同時に剣道での目標でもあるのだから。
だけど、私が仮に高校一になれたとしても、達兄にはなれないことは知っている。
私は女子。
男子の大会で優勝しなければ私の中では達兄にはなれないのだ。
…そう思うと大とコウが羨ましくて仕方がない。
最近、男子に対する劣等感に苛まれている。
…そして、それがとても腹立たしいんだ。
私は左右にいる男子を感じながら、そんなことを考えていた。
すると、学校へと近付くにつれて同じ学校の生徒が周りに増えたのと同時に私達の側にも何人かの女子生徒が自然に増えていく。
その女子生徒の目的はコウだ。
見る見るうちにコウは女子生徒に囲まれていく。
それを呆気に取られながらも、まあいつものことかと…心中でぼやきながら、その塊の後ろで大と並んで歩みを進める。
「…朝から羨ましい限りだな」
苦笑いを浮かべて大が言う。
「まあ、コウは大に比べて随分と大人だし、頭も良くてスポーツ万能。女子が群がるのも仕方がないんじゃない?」
「だからって、朝っぱらから女子が寄って来るって少女漫画じゃあるまいし…」
呆れたように大がため息をつく。
「何?大もモテたいの?」
私はサラッと大に質問した。
「…まあな。一応、男なんで」
「…ふうん」
その言葉でまた劣等感に苛まれる。
「…何だよ?」
大が私の返事に不満を抱く。
「…別に、大も男子なんだなと思っただけ」
劣等感が表情に出ないようにポーカーフェイスを心掛けた。
「そんなの当たり前だろ…というか、ちえはモテたいとは思わないのかよ?」
「ん?女子に?」
私の質問が大を怪訝な表情に変える。
「…女子のお前が女子にモテても仕方ないだろ。男子にだよ」
「うーん、ないかな。というか、今はそういうのに興味がない」
そうだ。
恋だの愛だのなんて要らない。
今の私には剣道だけで充分だ。
「…そっか。ちえらしいな」
そのあと、大はしばらく何か考えごとをしているのか黙り込み、それをなんとなく察して話しかけずにいた。
コウのお陰もあり、時間内に学校に到着した私達はそれぞれのクラスに向かう。
一年は六クラスあり、私達は別々のクラスだ。
私は1-Aで、大がその隣の1-B、コウは1ーFになる。
だから、自分のクラスに行くと幼馴染みがどんな1日を過ごしているかは互いに知らない。
クラスが違っても一緒にいた中学の時とは違って高校に入ってからは、それそれ自分のクラスメイトと一日を過ごしている。




