三本勝負②
不意にそれが破られた。
彼女が軽く、それでいて力強く私の竹刀を薙ぎ払う。
声を張り上げて彼女が私の面に打ち込もうと飛び込んできた。
そして、彼女の竹刀が私の面を捉える瞬間、私は勢いよく後ろに飛んだ。
寸前の距離で彼女の攻撃を交わす。
ギリギリのところで避けた私は左足で体育館の床を思いっきり踏み込んで後ろへと流れていた自分の体を止めた。
すると、今度は右足で前へと勢いよく踏み切って前へと飛ぶ。
私は力強く声を張り上げて、彼女の面に竹刀を打ち込んだ。
「面あり!」
山崎先輩が勢いよく手を上斜めに挙げた。
一本だ。
私は速やかに開始線に立つ。
彼女も同じく開始線に立った。
互いに竹刀を構え、先をピタリと合わせる。
その瞬間、山崎先輩が手を下ろす。
「2本目!」
山崎先輩の宣告と共に私と伊東さんの竹刀が動いた。
今度は激しい鍔迫り合いになる。
私が押していくが、すぐに彼女も体勢を立て直して押されてしまう。
少し距離を置いて、再度ぶつかっていく。
その際に私も伊東さんも細かい攻撃はしなかった。
狙うは面のみだと互いに意識し合っているからだ。
勿論、そんなことを彼女と話してはいない。
でも、竹刀を交えてなんとなくお互い分かっているのだろう。
この相手に小細工は通用しないのだということを…
この試合はきっと、確実な面のみが勝敗を決することが出来る。
彼女が上手く移動して、攻撃の隙を作って面狙いで気合いを入れながら竹刀を何度か打ってきた。
それをなんとか防いでいく。
いつ有効打を打たれてしまうか分からないくらい彼女の攻撃は続いた。
私は冷静に反撃の機会を窺う。
なかなか攻撃のチャンスを与えてはくれない。
守りに徹しないとやられてしまうからだ。
…強い!
一本を決めていて、もう彼女にあとがないため、なんとしても一本を取りにきている気迫をひしひしと感じた。
こんなに苦しい剣道は久しぶりだ。
…いや、同性相手では初めてかもしれない。
そう思うと自然と笑みが溢れてしまう。
楽しい!
こんなにも楽しい剣道は久しぶりで、私の感情は高揚で溢れていた。
絶対に負けたくない!
そう力強く心に誓った時、私の竹刀が右に大きく動いた。
伊東さんの竹刀によって、弾かれたのだ。
がら空きの面を彼女が素早く竹刀を切り返して狙いにくる。
それを左に交わし、下がった竹刀を素早く引き上げて、彼女の右側から回り込む。
彼女もそれを読んでか、体勢を立て直してこちらの攻撃に備えて構えた。
でも、遅い。
体勢を立て直す前に、私は勢いよく彼女に飛び込んでいった。
「めぇぇーーん!!」
私は声を張り上げながら、竹刀を伊東さんの面をめがけて打ち抜く。
確かな手応えを感じて、山崎先輩の手が上がるのが面越しから見えた。
「勝負あり!」
山崎先輩の手と副審の手が斜め上に上がる。
…勝った。
私は中央に戻り、竹刀を相手に向けながら軽く礼をして、しゃがんで竹刀を収め、五歩ほど退がり再度、礼をしてからコートの外へと出る。
伊東さんもそれを綺麗に行なっていた。




