取り消して!②
「どういう意味?」
間髪入れずに聞き返す。
「あなたたちよ。あなたや近藤くんの存在が彼に剣道をさせているだけ。彼の本質は剣道だけに収まる程、勿体ないものではなくてよ」
彼女の言葉に更に心が騒ついた。
「そんなことはない!コウは剣道が本当に好きだからやっているの!あなたにコウの何が分かるのよ!」
「なら、あなたなら土方くんのことが分かるというのかしら?」
彼女の質問に当たり前だと頷く。
「幼馴染だから当然よ!コウと大のことは誰よりも理解しているつもりよ!」
「…理解しているつもり?だとしたらそれは本当につもりなのね」
「なっ!?」
彼女の言葉に更にカチンときて、今にも血管が切れてしまいそうだった。
「…だって、あなたは彼のことを全く理解していないから」
呆れたように言う彼女の表情に今にも暴れ出したくなる寸前だ。
「ちゃんと理解している!あなたに私たちの何が解るのよ!言ったことを全部取り消して!剣道を馬鹿にしたことを今すぐ取り消して!」
「…まあ、いいわ。そこまで言うなら取り消してあげてもよくてよ」
「えっ…?」
彼女が急に私の苛立ちにブレーキをかけた。
「私に剣道で勝てたら取り消してあげますわ」
「へっ…?」
突然の彼女の申し出に頭がついていかず、思わず訊き返す。
「…ただし、あなたが私に負けた時はあなたは剣道部を辞める。それでどうかしら?」
その言葉に一瞬、言葉を失った。
「あら?自信がなくて?あなたのフィールドで戦ってあげると言ってますのよ。あなたの言うその剣道の精神とやらは所詮そんなものでしたのね」
「…いいわ、やるわよ。負けたら剣道部を辞める。私が勝ったら剣道をあんなもの呼ばわりしたことをちゃんと取り消してもらうわよ?」
私は少し躊躇するも、彼女の勝負を受けることにした。
「分かったわ。では早速、放課後に勝負しましょう。三分間の三本勝負。それでいいわね?」
「いいわ」
私はこくりと頷いた。
「そうと決まれば早速胴着を届けさせなければいけませんね。…暑苦しいので、あまり気は進みませんわ」
伊東さんがため息をつきながら携帯電話を取り出して電話をかけ始めた。
「もしもし、私よ。放課後に剣道の試合をすることになったわ。至急、学校まで胴着を届けて頂戴」
そう告げると彼女は電話切って携帯電話を仕舞った。
そして、私に歩み寄る。
「私の実力を甘くみると、剣道をあんなもの呼ばわりした相手に負けるかもしれませんわよ?くれぐれも必死に頑張りなさい。まあ、負けても剣道を辞めろとは言わないわ。その時は違う学校で剣道部に入ってやり直すことね」
そう言って伊東さんは上品に笑いながら、私の横を通り過ぎていった。
その後ろ姿をジロリと睨みつけてやる。
…絶対に負けるもんか!




