伊東瑛里華①
翌日の昼休み、思わぬ訪問者たちによって貴重な時間を奪われることとなる。
いつものように藤堂さんと山南さんとお弁当を食べていると、入り口に見たことがある女子生徒たちが次々と教室に入ってきて、気が付くと私たちの周りを取り囲むように立っていた。
全員で五人…おそらく朝にいつもコウにまとわりついてくる女子たちだ。
「沖田さんちょっと話があるんだけどいいかな?」
女子生徒の一人が無愛想な表情で私に訊いてきた。
少なくとも人にものを頼む言い方ではない。
「…今、食事中なんだけど?見て分からない?」
私の代わりに藤堂さんが答える。
藤堂さんはアンタたち馬鹿なのと付け足したそうな顔をしていた。
「あなたには言っていないわよ。引っ込んでてくれない?」
今度は別の女子生徒が藤堂さんに噛み付いた。
藤堂さんがムッとした表情を浮かべて、そっと箸を置き立ち上がる。
その様子を見ていた山南さんはひたすらオロオロとしていた。
「友達が困っているのを黙って引っ込んでいられないわよ」
藤堂さんが女子生徒に顔を近づけて言った。
思わず女子生徒が後ずさる。
このままでは私のせいで喧嘩になり兼ねない。
仕方なく私はまだ食べている途中だけれど弁当箱を閉じた。
その様子を見て藤堂さんが怪訝な表情を私に向ける。
「沖田さんが行くことないよ」
藤堂さんの言葉に私は首を横に振った。
「ありがとう。でも、私が行かなきゃこの人たちは納得しないわ。大丈夫、すぐ帰ってくるから…」
私はスッと席を立ち藤堂さんの頭を撫でた。
「…沖田さん」
藤堂さんはさっきとは一変して心配そうな表情を浮かべる。
「手短によろしくね」
そう言って鋭い目線を彼女らに送る。
「…ええ、分かっているわよ」
彼女たちはさっきまでの威勢はどこに行ったのと言うくらい情け無い表情になっている。
私は彼女たちと一緒に教室を出て、校舎裏に向かった。
「で、話って何?」
校舎裏に着いた途端、私は仁王立ちして彼女たちに問いかけた。
「ひ、土方くんのことよ。…一体、あなたは土方くんの何なのよ?どう見たってただの幼馴染には見えないわよ!」
女子生徒たちの中で一番気の強そうな女子が私に吠えた。
…どう見たって幼馴染だと私は思うのだが、どうやら彼女たちはそうは思ってくれていないようだ。
昨日の帰り道に考えていたことが蘇る。
「…ただの幼馴染…って納得して貰えないなら私にこれ以上どうしろというの?」
私の問いに別の女子生徒が答える。
「…はっきりして欲しい。あなたが土方くんと何でもないのなら、いくら幼馴染でももう少し遠慮してくれないと私たちから見たら何でもないようには見えないの」
その娘の言葉に私の胸が痛んだ。
…そういうのは私にはよく分からない。
「…でも、コウは大切な幼馴染であって、何でもあるとかないとかではなく、それが普通だから遠慮するとか言われても困るよ」
私はさっきより低いトーンで言い返した。
「彼女の言う通りだと思いますわ」
女子生徒たちとは違う方向から声が聞こえた。
それが後ろだと分かって、慌てて後ろを振り返る。
そこにはスラッとした体型で綺麗に整った顔、見るからに清潔感のある長い髪の女子生徒が腕を組んで立っていた。
「伊東さん!?」
女子生徒の一人がそう叫んだ。
伊東さん…コウから聞いたことがある。
何でも同じクラスにあの伊東財閥の娘がいると…
「初めまして。その方たちと同じクラスで、土方くんとも同じクラスの伊東 瑛里華と言います」
財閥の娘である伊東さんがそう言って、綺麗に会釈をした。
私も思わず頭を下げる。




