お似合い
「ねえ?大は斎藤さんが好きなの?」
部活帰りの夜道、幼馴染三人で並んで歩いていた時、真ん中にいた私が突然右隣を歩く大に訊いた。
「はぁあ!?な、何言ってんだよ突然!」
大が大声で叫ぶ。
「大、夜道は叫ぶな。…ちえも叫ばせるなっ」
コウが人差し指を立てて口に当てる。
「…変な質問してごめん。いや、なんとなく斎藤さんみたいな女の子が大はタイプな気がして…」
申し訳なさげに頭を小さく下げる。
「…そんなんじゃねえよ。ただ、なんとなく同じくクラスだから話すようになっただけだって…確かにいい子だとは思うけど、好きだとかそういうんじゃないからな」
大が外側に顔を背けながら話す。
「…そうなんだ。私はお似合いだと思うけどな…」
そう言ったあと、少し後悔した。
…でも、嘘じゃない。
大には斎藤さんのように可愛らしい女の子がお似合いだと思ったんだ。
「俺もちえと同意見。大と斎藤さんはお似合いだと思うぞ」
左隣を歩くコウがそんなことを言う。
「…なんだよそれ?だから、そういうんじゃないって…!」
大が再び声のボリュームを上げたので、コウが再度人差し指を口の前に立てて大に向けた。
「…言ってんだろ」
大が仏頂面を浮かべる。
「全くないの?斎藤さん可愛いじゃない?」
大の顔を覗いて訊いた。
「まあ、可愛いっちゃ可愛いと思うけど…」
大が恥ずかしそうに言う。
その言葉に少し胸がちくりとした。
「…まあ、これから恋になるかもしれないだろ?否定すると後が大変だぞ?」
コウがニヤリ顔を作った。
大がますます仏頂面になる。
「俺は斎藤さんは大に興味があると思うけどな…なければわざわざ剣道部のマネージャーにはならないだろ?」
コウの言葉にまた胸がちくりとした。
「コウはどうなんだよ?俺よりたくさん女子に興味を抱かれているじゃねえかよ?」
大の質問に私は大からコウへと視線を移した。
「それは純粋に嬉しいよ。まあ、それに応えるかどうかは別としてな」
コウが私の視線に気付いてこっちを見て言った。
「…それ分かる。私も原田の気持ちには応えるつもりないけれど、好かれるってことは嫌じゃないから…」
原田は凄く良いやつで、その気がないのならちゃんと意思表示をしなきゃいけないのだろうけど、どうしても突き放すことが出来ない。
それは優しさなんかじゃなく、このままの関係を続けたいという私の甘えだ。
「…なんかこの三人で並んで帰るのも、そのうちほんとに出来なくなるかもしれないな」
大がそんな寂しいことを言う。
「…まあ、しばらくは大丈夫だからそんなことを考えるな。ちえがまた泣いてしまう」
コウが悪戯っぽく笑う。
「…だな。泣かれると面倒だしな」
大も釣られて笑った。
「泣かないよ…私だってもう子供じゃないんだからね」
頬を膨らませて反論する。
強がりだった。
まだまだ私は子供だ。
幼馴染の仲良し三人組のままの私がここにいる。
体だけが先行して、何だか心が追いつかないんだ。
周りが恋だの愛だの言い出すようになっても、いまいちピンと来ない。
いつも一緒でたまに喧嘩して、また仲直りする。
いつまでもそういう関係でありたい。
それがいつまでも続かないことは私だって分かっている。
…でも、出来るだけ長く…少しでも長くこのままでいたいんだ。
そんなことを思いながら、大とコウが横にいることの幸せをを噛み締める。
そして、たわいない会話をしながら残りの帰路を歩んでいった。




