どうするんだよ?
「大!コウ!いる!?いるなら出てこい!」
体育館の横にある更衣室の男子側の扉を開けて叫んだ。
男子が着替えているなどという理性を今は持ち合わせていない。
「わぁ!?何やってんだ沖田!!閉めろ!早く閉めろ!」
一番手前にいた山崎先輩が慌てて下半身を袴で隠す。
「…別にパンツをはいてない訳ではないのだから、そんなに慌てなくていいでしょ?」
「阿保っ!そういう問題じゃない!いいから早く閉めろ!あいつらならもう着替え終えて体育館だ!」
山崎先輩がそう言って、乱暴に扉を閉めた。
体育館か…!
すぐ横の体育館へと走って行き、重い扉を勢いよく開けた。
その音に既に練習を始めている部員がこちらに注目する。
その中に大とコウがいた。
「大!コウ!ちょっとこっちに来て!話がある!」
そう叫ぶと周りの部員は固まり、大とコウだけがゆっくりとこっちに歩いて来た。
「一体、なんだよ?ていうか、まだ着替えてないじゃねぇか?」
大が気怠そうに言った。
「…何だ?何を怒っているんだ?」
コウが些か困惑気味に訊いてくる。
「いいから!ちょっと来て!」
私は二人の手を掴み、強引に体育館裏へと連れて行った。
「おいおい、こんなところで何をする気だ…って、かなりご機嫌斜めな表情してますね…」
大が私の表情を見て言った。
怒りが抑えられず、自分でも今どんな表情をしているのか検討もつかない。
「…で、そんな顔をしている原因は何だ?」
コウがやや面倒臭さそうに訊いた。
「二人とも私が原田に告白されたことを知っていたのよね?」
私の言葉に二人の表情がみるみるうちに引きつり始めた。
「…いや…そのなんだ。…あれは事故というかなんというか…」
大がしどろもどろに答える。
「…武田先輩か」
コウが額に手を当てる。
「何で黙ってたの!知ってるくせに知らないふりして、そんなに私が困惑していたのが面白かった?最低よ!」
めいいっぱい二人に怒りをぶつける。
「…悪かった」
「…ごめん」
大とコウが素直に謝る。
それでも私の怒りは収まらない。
「…何よ!原田のことは黙っているし、二人してなんだか様子は変だったしさっ!隠し事ばかりじゃない!」
そう吠え、頬を膨らませた。
「それは…おな…」
「大っ!」
大が何か言おうとしたのをコウが首を振って制止する。
「…また、隠し事?」
二人をジロリと睨みつける。
「違う…そうじゃない。黙っていたのは謝る本当にごめん。…でも、俺も大も黙っていたんじゃなくて言い出せなかったんだ。ちえが逆の立場なら言い出せるか?」
コウの言葉で午前中の1-Bの教室での光景を思い出す。
「うっ…」
思わず、図星だというリアクションを露呈してしまう。
それに大とコウが若干ホッとしたように見えたので、ついつい二人の頭上に面!とばかりにチョップを落とす。
このままじゃ悔しい気持ちが私を暴挙に走らせる。
「…っ!お前な…!」
大が頭を片手で押さえながら涙目で言った。
その隣でコウが両手で頭を押さえながら悶えている。
「こんなところで何やってんだ?なんか楽しそうだな?」
声が聞こえて振り向くと、そこには体操着姿の原田が立っていた。
「げっ、原田!?」
「おいおい、げって何だよげって…」
私のリアクションに原田が怪訝な表情を浮かべる。
「さあ、練習に行くぞ原田。今日はみっちりしごいてやるから覚悟しておけ」
さっきまで、痛みで苦しんでいたコウがケロッと表情を戻して、原田の後ろ襟を掴んで連れて行く。
「ぐぇっ!…なんか今日はいつもより機嫌が悪くないかっ!?」
原田が叫びながら体育館へと連れて行かれる。
「…なあ、ちえ?」
コウに連れて行かれる原田を見ていたら、後ろから大が話しかけてきた。
「ん?何?」
「…あいつ諦めてないみたいだけど、どうするんだよ?」
まだ、頭が痛いのか頭を押さえながら大が私に訊いた。
「どうするも何も…あの時いたなら、私が断った理由を聞いていたでしょう?」
「…だけど、それでもあいつが諦めなくて…剣道部にも入ってきたし、この前よりもちえが原田を知ってしまってから再度告白されたらどうするんだ?」
しつこく大が訊いてくる。
「…勿論、断るわよ。私が剣道一途なことは大がよく知っているでしょ?…私のことより自分のことを心配しなさいよ」
斎藤と大が呼んだ女子の顔を思い浮かべた。
「…は?何のことだよ…?」
大が首を傾げながら怪訝な表情になる。
「…なんでもない。さあ、練習練習!日曜日、試合だよ?こんなことを話している場合じゃないわよ!私、着替えてくる!」
そう言って踵を返して、大から逃げるように歩き出す。
「…何だよ。自分がこんなところに連れてきたんじゃねえか…」
後ろから大のぼやきが聞こえたが、歩みを止めず更衣室へと向かった。




