この表情は見られたくない
二時限目と三時限目の休憩時間になると席を立って教室を出る。
いきなり昼休みに大のところへ行くよりは、今の間に少し相談したいことがあると伝えておこうと、すぐ隣の1-Bの教室に行く。
廊下から窓越しに大の姿を見つける。
教室の扉は開いていたので、ここから手を挙げて呼ぼうとしたが、私は咄嗟にその手を止めた。
「斎藤っ」
大がそう声を上げながら誰かの席に向かっていく。
大が斎藤という人物が座る席の前に立つ。
その席にはそのクラスの女子が座っていた。
少し大人しそうな印象の女子だ。
大が斎藤という女子と何やら楽しげに会話を始めた。
その様をしばし固まったまま見ていたが、すぐに踵を返して廊下へと逃げるように出てしまう。
大の視界が届かないところで廊下の壁にもたれて咄嗟に胸を押さえた。
…何で逃げるのよ?
あのまま、大に話しかけたら良かったじゃない?
そしたら、あの斎藤さんという子とも仲良くなれたかもしれないのに…
何を逃げる必要があるのちえ?
自問自答して、再度1-Bの教室に戻るよう自分を奮い立たせる。
…でも、足が進まない。
…そして、なんだかとても胸が苦しい。
私はぎゅっと胸元を手で押さえながら自分の教室に戻っていく。
教室に戻ると、そそくさと席に着いて顔を埋めた。
今は誰にもこの表情を見られたくない…
すぐにチャイムが鳴り、三限目が始まる。
それに安堵して、私はゆっくりと顔を上げて授業を受けた。




