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とらいあぐる  作者: おきゆむ
高校一年 春
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13/75

変だぞ三人とも

実は原田に告白を受けてからあまり記憶がない。


気が付くと男子側の練習に参加する時間になっていた。


記憶がないというよりはずっと考えてしまっている私がいる。


昨日に続いて何をやっているんだと自分自身に叱咤しったするも全く身が入らない。


このままだと大との手合わせでコテンパにされてしまう…


両手で自分の頬を軽く叩いた。


しっかりしろ私!


告白くらいで情けない!


気合いを入れ直して、男子側へと向かって歩いて行く。


でも、すぐに原田の言葉が頭に入ってくる。




俺は諦めないからな!




私は思わず、頭をぶんぶんと振った。


駄目だ…!


今は練習に集中しろ私!


「…大丈夫か沖田?」


ふと我に返ると山崎先輩が心配そうな眼差しを私に向けていた。


「…はい!大丈夫です!今日も昨日と同じでいいですか?大と手合わせをする約束をしていたので!」


誤魔化すように声を上げた。


「…ああ、構わないが本当に大丈夫か?」


私はこくりと頷いて、面を被り表情を隠した。


精神のコントロールが出来なくなっている今は一体どんな表情をしているか自分でも分からなくなる。


変に悟られたくない。


特にそういうことに気付きやすいコウには…


「…やるわよ大!」


立ち上がり大の元へと行き、大を誘う。


「…あ、ああ」


面をつけているので大の表情は見えないが、なんとなく受け答えに違和感を感じた。


大との手合わせが始まり、雑念を消すかの如く、全力で打ち込んでいく。


しかし、やがて集中力が散漫してきて、思い通りに動けない自分に苛立ちを覚える。


何をやってるのよ私!


苛立ちからか打ち方ががむしゃらになっていく。


すると一瞬、隙だらけの状態を大に与えてしまう。


…やばい打たれるっ!


一瞬、覚悟したが、大の竹刀に打たれることはなかった。


えっ…?


今日の私は変だけれど、大の様子も変だ…


いつもの大なら今のを見逃す筈がない…


その後も、同じようなことが二、三回あった。


手合わせを終え、人のことを言えた義理ではないとは思うけど、一体何をやってるのって顔で大を見る。


「…なんだよ?」


「…別に」


言いかけたところで、飲み込んだ。


集中力に欠けていたわよと言えた立場ではない。


「…おいおい、どうした?」


私と大が座っているところに山崎先輩が呆れた声で訊いてくる。


「今日は変だぞ三人とも…」


三人…?


その言葉に反応し、山崎先輩の顔を伺う。


すると先輩の視線の先にコウがいた。


「…今日のあいつは駄目だ。キレというか全く集中出来ていない…お前らならまだ理解出来るが、あんなあいつは想像出来なかった。…何かあったのか?」


山崎先輩の問いに首を傾げた。


私は確かに何かあったが、コウのことは分からない。


…大も変だ。


二人の間で何かあったのだろうか…?


私は大の顔を見た。


大は私にも山崎先輩にも顔を合わさずにただ悔しそうに俯いている。


「…まあ、いい。でも、こんなことではいくらお前らの実績でも関東大会やインターハイのレギュラーは保証出来ないということは覚えておけよ…」


「…はい」


大が俯いたまま返事を返す。


それを聞いた山崎先輩が踵を返して私達から離れていく。


「…二人とも、何かあったの?」


山崎先輩が離れていった途端、私は大に問いかけた。


「…何もねぇよ。俺もコウも至って普通だ。…たまにはそんな時くらいあるだろ」


大がそう言って立ち上がり、私から離れていく。


コウに視線を向けると、二年生と稽古をしていたが、すぐにいつものコウらしさがないと分かった。


…山崎先輩の言った通りだ。


変だ二人とも…


といっても、私も今日はおかしい。


いや、昨日もか…


告白くらいでこんなに集中が欠くなんて、まだまだ精神的な修業が足りない証拠だ…


我ながら情けないと卑下ひげする。


その日の部活の帰り道、私達はいつものように並んで歩いていた。


しかし、そこに会話はない。


…もう、何なのよこいつら…私まで気を遣うじゃない。


結局、一言も発せずに別れ際に「またね」と言っただけだった。

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