原田の呼び出し
剣道に集中出来なかった翌日の放課後、私はすぐに部活へ行く準備していた。
「…沖田いるか?」
教室の入り口の方から自分の名前を呼ばれたのが聞こえて視線を向けると、そこには1-Eの原田の姿があった。
原田が私を訪ねてきたことに驚くも、それを見せないように平然を装いながら原田のもとへ行く。
山南さんと藤堂さんの心配そうな表情がチラッと見えた。
私は大丈夫だよと言うように笑みを浮かべる。
「…何?まだ、昨日のことを根に持ってるの?」
私はつい素直ではない口調で原田に言ってしまう。
…自分が悪かったにも関わらず。
「…ちげえよ。ちょっと話があるから顔貸してくれ…」
原田はこっちを見ずに言った。
「…部活があるから手短によろしくね」
そう言って、鞄と竹刀を持ってそのまま部活へ行ける準備をしてから、原田と一緒に校舎を出て校舎裏へと向かった。
…話って何?
やっぱり昨日のことだろうか…?
いくら根に持っていないと言っても、一方的に二発もかましてしまったんだ…許してはくれていない筈だ。
…まさか、決闘の申し込みじゃないよね?
原田の背中を見ながら、そんなことを想像をする。
校舎裏に着くと、原田が私の方に振り向いて、鋭い視線を向けてきた。
…やっぱり昨日の続きをするつもり!?
私は咄嗟に身構えた。
「…お前さぁ…誰か付き合っているやつとかいるのか?」
「…へ?」
急に原田がおかしなことを訊いてきたので、思わず変な声が出てしまう。
「…だから!彼氏とかいるのかって訊いてんだよ!」
原田が声を荒げた。
そんなことを訊いてどうする…?
呆気に取られながらも原田の質問に答えようと口を開く。
「…いないわよ」
「本当か?昨日、一緒にいた男子のどっちかと付き合ってるんじゃねぇのか?もしくは好きとか?」
原田が少しテンパるような様子で質問してきた。
既に昨日のような不良の凄みはそこにはない。
「…大とコウはただの幼馴染み!そんなんじゃないし、そんな風に見たこともない!てか、一体何なのよ!?」
原田の意味が分からない質問に苛立ち、声を荒げた。
「好きだ!」
原田が突然そう叫ぶ。
「…はあ?」
「…だから、お前のことが好きになってしまったんだよ!俺と付き合ってくれないか?」
「はあぁぁ!?」
原田の突拍子もない言葉に私は大声をあげてしまう。
告白ってやつだ…
私はどうしていいか分からずに数秒の間、狼狽えてしまったが、すぐに原田に向かって頭を下げた。
「ごめん…今の私は剣道で頭が一杯なの。それに昨日初めて話した相手に付き合ってくれって言われてもピンとこない…だから、付き合えない」
私はドキドキしながらも、懸命に原田の申し出を断る。
「…そっかぁ。…昨日の今日だもんな…やっぱり無理があるよな」
原田はそう言って落胆するように頭を下げた。
そんな原田にどう声をかけていいか分からず、逃げるように踵を返してゆっくりと原田から離れていく。
「…でも、俺は諦めないからな!」
原田の言葉を背中越しに聞く。
だけど、私は歩みを止めずにその場から立ち去った。




