青春はあっという間
いつも「とらいあんぐる」をお読み下さり、ありがとうございます。
明日の9月11日の投稿は休載します。
すみません。
「おっ、沖田!今から部活か?」
火曜日の放課後、部活へ行く途中、渡り廊下で向かいから歩いてきた原田が私に気づいて声を掛ける。
「うん。原田はもう帰り?」
渡り廊下の途中で立ち止まり、原田に訊いた。
「いいや…今から補習だ。中間テストでひでぇ点取っちまったからな」
と少し恥ずかしそうに頭を掻いた。
「あらら…ちゃんと勉強しないと駄目じゃない?文武平等の時代だよ?」
と、中間テスト補習ギリギリセーフの私が偉そうに言った。
「それを言うなら文武両道だ馬鹿たれ」
突然、後ろからご指摘を受ける。
振り返るとそこには白衣姿の永倉先生が立っていた。
先生とあうろう人が白衣の左右のポケットに手を入れて歩いている。
「おっ、原田。身体の調子はどうだ?」
原田に気づいた永倉先生が言った。
「お陰様でだいぶ良くなってます。あっ、やべぇ早く行かねぇと…!じゃあな沖田!来週からはまた練習に参加するからよろしくな!」
と原田が大慌てで渡り廊下を走っていく。
…原田もちゃんと敬語使うんだと思った。
「いやぁアオハルだな…で結局、誰にするんだ沖田?」
相変わらずポケットに手を突っ込んだまま、永倉先生が私に訊いた。
「結局って何ですか?誰でもありませんよ…」
とそっぽを向く。
「そうなのか?残念だな…この前の騒動がきっかけで少しは誰かと進展したのかと思ったのに…つまらんつまらん」
と永倉先生が首を左右に振った。
「…私はあなたを楽しませるために恋愛をする気はありませんよ」
と文句を言う。
「原田」
突然、永倉先生が言った。
えっ、どういうこと?
「武田」
続けて永倉先生が武田先輩の苗字を口にする。
「違うか…なら土方」
そう言って、永倉先生が私の眼を真剣に見つめてくる。
「でもないか…なぁにやっとるんだアイツらは…じゃあ、最後に近藤」
なんとなく永倉先生がやりたい事が分かったとき、永倉先生が大の苗字を呼んだ。
その瞬間、脳裏に昨日の朝にあった出来事が脳裏に浮かぶ。
大の身体の温もりが僅かに蘇った。
「なるほど…近藤か。やるなアイツ」
永倉先生が妙な誤解をし始める。
「違います…なーんにもありませんからっ」
と否定する。
「…そんなに否定しなくてもいいんだぞ沖田?青春は今しかない。せっかく男が向こうから寄ってくるんだ。しっかり青春しろ。私からしたら羨ましいくらいだ…戻れるならあの頃に戻りたいわ…歳は取りたくないな」
永倉先生がため息を吐いた。
「…先生にも私くらいの歳の時があったんですね?」
「…おいおい。沖田は私を一体何だと思っているんだ?失礼だぞ?ちゃんと私もそれなりに青春していたぞ。ただ、思っていたよりも青春ってのは過ぎ去るのが早い。剣道にうつつを抜かしていたら、あっという間に青春なんてものは終わるんだ。まあ、私も剣道をやっていたから、沖田の剣道に集中したいって気持ちは分からんでもない」
永倉先生の話を軽く聞き流していたら、何かに引っかかって思わず「ん?」となる。
「…今、何て言いました?」
と永倉先生に問いかける。
「ん…?ああ、青春はあっという間だぞ」
永倉先生が思い出すように言った。
「違います!そこじゃない!最後の方に言ったことです!」
と思わず熱くなる。
「私も剣道をやっていたから、沖田の剣道に集中したいって気持ちは分からんでもない…ってとこか?」
永倉先生が頭に人差し指を当てて言った。
「はい、そこです!先生って剣道やってたんですか!?」
と驚きの声を上げた。
「ん、知らなかったのか?」
永倉先生が意外そうな反応をする。
「はい、全然」
と興味津々の顔を永倉先生に向ける。
「私が沖田の兄さん。和哉と出会ったのは剣道繋がりだぞ?大体、和哉がウチの事務所で働くきっかけになったのも私経由だしな。私の父親が探偵やってるって言ったら、和哉が是非紹介して欲しいって頼まれたんだ。まあ、その理由はこの前聞いただろう?」
永倉先生の話に更に驚く。
…そうだったんだ。
和兄が探偵事務所で働いているのは昔に家を出て行ったお父さんのことを調べるため…
「あと、沖田の一番上のお兄さん達哉とも面識がある。というか達哉とは同級生だ」
永倉先生の発言に驚いた私は思いっきり声を上げてしまった。




