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元ホームセンター店長、異世界で過剰防衛に目覚める〜ゴミスキル【鬼ごっこ】でタッチした瞬間に、傲慢勇者が全人類から殴られる〜  作者: 月神世一


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EP 15

課金勇者の社会的抹殺ざまぁ。ネタキャベツの大暴露配信と、ブラック企業(神)への宣戦布告

巨大なクレーターの底。

全身の装甲を粉砕され、ボロ布のような下着姿で白目を剥いている課金勇者ゼロス。その頭上には、炎上神ワイズの意向で戦場を中継し続けていた『ゴッドチューブ』の配信端末が、未だにプカプカと浮遊していた。

「さあ、業務の総仕上げ(ざまぁ)といこうか」

トーヤは冷徹な眼差しで配信端末を見上げると、手に持っていた一際色の濃い『特ダネ級・ネタキャベツ』を、端末のカメラの真正面へと突き出した。

「お前、さっき『国を揺るがす大スクープ』があるって言ってたな。——今ここが、お前の最高の見せ場だ。洗いざらい全部吐け」

「ヒャッハー! 待ってましたァ! 俺様のとっておき、全世界にブチ撒けてやるぜェェッ!!」

ネタキャベツが、葉っぱを拡声器のように広げて大音声で喋り始めた。

『そこの白目剥いてる自称・勇者ゼロス! こいつは魔物討伐の義援金をガメて、全部自分のユニークスキル【マネー】の課金に突っ込んでやがったんだよ! しかも討伐した魔物は全部、こいつが自分で放った自作自演マッチポンプだ!』

「あ……が、やめ……」

ゼロスが痙攣しながら止めようとするが、キャベツの勢いは止まらない。

『それだけじゃねえ! こいつの裏垢には、ポポロ村を焼き尽くして【悲劇の勇者】を演じて再生数を稼ごうっていう、炎上神ワイズとの胸糞悪い打ち合わせの記録がバッチリ残ってんだ! さらにさらに! 先週は王都のキャバクラで「俺は神の使いだからタダで遊ばせろ」って暴れて、出禁くらってやがる!』

「な、なんだと……!?」

フェイトが呆れたように眉をひそめ、キャルルが「最低のクズですね……汚物以下の生ゴミです」と軽蔑の眼差しを向ける。

そして、ゴッドチューブの配信画面は、かつてないほどの『大炎上』を引き起こしていた。

空中に投影されたコメント欄が、滝のような速度で流れていく。

『は!? 義援金横領!? ざけんな俺の金返せ!』

『ヤラセで村を焼こうとしたのかよ! 悪魔じゃねえか!』

『炎上神ワイズもグルかよ! スポンサー降りるわ!』

『キャバクラ出禁勇者wwwダサすぎて草www』

『ポポロ村の店長さん、ナイス暴露! 勇者(笑)をBANしろ!』

ゼロスという男が築き上げてきた「正義の勇者」という虚飾のメッキが、音を立てて剥がれ落ちていく。物理的な敗北以上に、これは完全なる『社会的抹殺』だった。

もはや、彼がこの世界で勇者として生きていく場所は、ただの一つも残されていない。

「……っ、ああぁぁぁぁぁ……俺の、俺の栄光が……っ」

絶望のあまり、ゼロスの目からボロボロと血の涙がこぼれ落ちる。彼を支援していた信者たちも手のひらを返し、ゴッドチューブからの『チャンネル永久BAN』の通知が、空中に冷酷な赤文字で表示された。

トーヤは、その通知を一瞥すると、タローマン製のメガホンを手に取り、配信端末のカメラ——その向こう側にいる『神』に向かって、真っ直ぐに視線を向けた。

「……炎上神ワイズとか言ったな。聞こえているか」

クレーム対応の時のような、平坦で、しかし絶対零度の怒りを孕んだ声。

「他人の命を弄び、数字(PV)を稼ぐためだけに村を焼こうとしたお前のやり方は、俺が前世で心底憎んだ『ブラック企業』の悪徳経営そのものだ」

トーヤはメガホンを強く握りしめた。

恐怖で震えていた心音は、今はもうない。あるのは、仲間シフトを守り抜いた店長としての、揺るぎない覚悟だ。

「俺のシフトに穴を空けようとする奴は、たとえ神だろうと絶対に許さない。……お前らが運営しているそのふざけたゴッドチューブ、俺が必ず『倒産』させてやる。首を洗って待っていろ」

——ガシャァァァァァァンッ!!

トーヤはタローマン製のモンキーレンチを振り抜き、浮遊していた配信端末を物理的に粉砕した。

画面がブラックアウトし、世界にようやく、本当の静寂が訪れた。

***

「……くそっ! なんだあのゴミ店長はァァァッ!!」

天界の一室で、炎上神ワイズは専用のノートパソコンを床に叩きつけていた。

マイタンブラーに入っていたカプチーノが床にぶちまけられる。

モニターには『チャンネル永久凍結』『スポンサー撤退』『予算90%削減』という致命的なエラーメッセージが赤々と点滅していた。

「俺の最高のヤラセ配信が……っ! あんなホームセンターの資材と、ただのバフ野郎と、イカれたウサギにぶち壊されただと!? 絶対に許さん……あの店長、必ず俺が直々に地獄へ——」

ワイズがギリギリと歯を軋ませた、その時。

『——あらあら。新人の分際で、ずいぶんと威勢がいいじゃない?』

「な……ッ!?」

ワイズの背後、空間が歪み、漆黒のゲートが開いた。

そこから姿を現したのは、アバロン魔皇国の頂点に君臨する魔王ラスティア。そして、永遠の17歳を自称する世界神、女神ルチアナだった。

ルチアナはいつものジャージ姿ではなく、神気を纏った冷ややかな表情でワイズを見下ろしている。

「ル、ルチアナ様……それに魔王ラスティア! なぜあなたがここに……!」

「決まってるでしょ。私の大好きな『朝倉月人』くんのライブを見る時間を削ってまで、あなたのクソみたいなヤラセ配信を見せられたんだから」

ラスティアが、パチンと指を鳴らす。

瞬間、ワイズの体を不可視の重力魔法が押し潰し、彼は床に這いつくばった。

「ワイズ。あんたのやり方は下品すぎて、PV(数字)の美学がないのよ。それに……あのポポロ村の店長、すごく面白いじゃない。私が直々にちょっかいを出したくなったわ」

ラスティアが、妖艶な笑みを浮かべて唇を舐める。

「(……あの『店長』、太郎のルナミスのタローマンの資材を完璧に使いこなしてた。おまけに、ガオガオン並の危機管理能力。……ただの転生者じゃないわね)」

ルチアナもまた、コタツ部屋でのだらしない顔を捨て、世界神としての鋭い目でポポロ村の方向を見つめていた。

「秋月冬夜、ね。……ふふっ、この退屈なアナスタシア世界に、最高の劇薬イレギュラーが紛れ込んだみたい」

神々と魔王の思惑が、トーヤという一人の男を中心に、不気味に動き始めていた。

***

一方、当のポポロ村。

激戦から数日が経ち、村はかつての平穏を取り戻しつつあった。

「よし、ここの防壁の補修はこれで終わりだ。タローマンの速乾セメント、相変わらずいい仕事するな」

トーヤは作業着の袖をまくり、額の汗を拭った。

魔物に破壊された村の設備を、自警団や村人たちと共にDIYで修復する毎日。面倒ではあるが、誰も欠けることなくこの日常を迎えられたことが、トーヤにとっては最高の報酬だった。

「てーんーちょーっ♡」

背後から、甘い声と共にマッハの速度で飛びついてきた影があった。

「ぐはっ!?」

トーヤの背中に、キャルルがコアラのようにガッチリとしがみつく。

「お疲れ様です、店長! 今日はルナキン(ファミレス)で、イチゴパフェ大盛り奢ってくれますよね? 私、すっごく頑張りましたから!」

キャルルは満面の笑顔で、トーヤの首筋にウサギの耳をスリスリと擦り寄せてくる。

満月ハイ状態の反動も、村の『聖なる泉』に浸かったことでだいぶ回復したようだ。

「わかった、わかったから離れろ! 首が締まる! あと俺の奢りってなんだ、経費で落とすぞ!」

「えへへ〜。店長の匂い、落ち着く……一生離れませんからね♡」

ヤンデレの愛がますます重くなっているキャルルを、トーヤはため息をつきながらも引き剥がそうとはしなかった。

「よぉ、店長。お熱いこって」

そこへ、ポポロシガーを吹かしながらフェイトが歩いてきた。

彼の片手には、ルナミス新聞の競馬欄が握られている。

「今日はコイントス、どうだったんだ?」

ハズレだ。絶望的に体調が悪い。だから今日の午後は有給もらうぜ」

「お前なぁ……まあいい。今は平和だし、ゆっくり休め。……この間の戦いは、お前が当ててくれなきゃ完全に詰んでたからな。感謝してる」

トーヤが素直に礼を言うと、フェイトは照れ隠しのように煙を吐き出し、ニヤリと笑った。

「へっ。アンタの盤面シフトがあったから、俺のコインが立ったんだ。……アンタが店長でいる限り、俺はいつでも100%の神になってやるよ」

最高の相棒の言葉に、トーヤの胃の痛みが、少しだけ和らいだ気がした。

ビビリで、戦闘力ゼロで、すぐに胃薬を噛み砕く元・社畜店長。

愛が重すぎるマッハ1のウサギ姫と、確率50%のクズ剣士。

欠陥だらけの三人だけど、このシフト(チーム)なら、きっとどんな理不尽な神様(ブラック企業)が相手でも——絶対に負けない。

「さあ、業務再開だ。今日も無遅刻無欠勤で、平和な一日を回すぞ!」

秋月冬夜の過剰防衛ハメ殺し戦記は、まだ始まったばかりである。

読んでいただきありがとうございます。

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